執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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交通事故において改造車が損壊した場合、その賠償額が改造しない自動車より高くなるのかどうか、なるとしていくら高くなるのか、争いになることがあります。
以下、裁判例をご紹介します。
1 交通事故で改造自動車の改造部分は評価されるか?
大阪地裁平成31年1月15日判決は、改造車の評価額について、「改造車の時価額を算定する際には,標準車の車両価格にその改造費用を含めて算定の基準とし,その交換価値を検討するのが相当であるが,その改造が法に抵触する場合や,車両の交換価値を増加させない場合やかえって交換価値を減価させる場合には,標準車の車両価格のみを算定基準とし,場合によっては標準車の車両価格を減額するのが相当である。」としています。
その上で、「本件においては,D車に対する改造の内容及び費用や,改造が車両の交換価値を増加させていることに関する証明がなく,標準車の車両価格である26万6720円を時価額とするのが相当である。」としています。
つまり、
・原則として改造していない自動車と同じ評価となる
・改造により価値を増額させたこと、改造内容・改造内容を立証した場合には、改造していない自動車の評価だけではなく、改造費用も含めて評価をする
・改造内容によっては改造しない場合より評価が下がる場合もありうる
ということです。
2 改造自動車の改造部分の評価例
算定例としては、東京地裁平成29年10月24日判決があります。
同判決は、「原告車の改造費については,改造部品の総額278万2757円からフレーム代18万3000円及びエンジン代13万0999円を控除した残額246万8758円に直近の改造費72万9957円を加算した319万8715円の2割程度とみるのが相当である。」としています。
ここでは、フレーム代とエンジン代は、同年式の車両の評価に含まれているものとして、加算の対象から外されています。
また、多くの修理がされて以降バイクの耐用年数を経過していることを考慮して、修理代の2割のみが評価に加算されています。しかし、直近の改造費についても2割減とされています。
また、東京地裁平成29年10月3日判決は、「事業用貨物自動車である原告車の耐用年数は4年とするのが相当であり,改造自体についても車両と一括して耐用年数を4年とみるのが相当である。原告車は車体自体に改造を加えており,キャビン及びボディーが完成しないと走行することができず,少なくとも平成26年3月17日まではボディーの改造が行われていたものとみて,同日を改造の完成日とすると,改造部分についての残存率は0.365となる。よって,原告車の改造費の合計額911万6100円に残存率0.365を乗じた額である332万7376円を改造部分の時価とし,これにベース車両の時価86万3000円を加算した419万0376円を原告車の時価とするのが相当である。」として、改造部分については改造費に残存率をかけて評価を算出しています。
このように、改造部分をどう評価するか、必ずしも一定の考えがあるわけではありませんが、修理代に減価償却処理をした金額をベースに一定の修正がありうるというように理解できます。
3 改造部分の価値を認めなかった裁判例
改造部分の価値を認めなかった裁判例も存在します。
大阪地裁平成28年2月12日判決は、「原告の主張する改造のうち,別紙の5番,6番,8番,15番~20番及び30番の改造は原告自身の体に合わせることが目的であること,3番,4番及び12番の改造は個人の好みによるものであること,25番の改造は携行品損害として計上され,29番の改造は実施していないことが認められる。このように,原告の主張する改造は,原告二輪車の客観的価値の増加に資するとはいい難いものが多数含まれている。」、「客観的な裏付けのある改造は本件事故から5年以上前に実施された改造の一部に限られており,対応する改造費用は合計90万円にも満たないことが認められる。本件事故当時,これらの改造による客観的価値の増加が残存していたとは直ちに認め難い。」としています。
このように、
・改造が個人の趣味や体に合わせたものであること
・改造が5年以上前であること
・改造金額が少ないこと
を理由に改造費用を評価に加算しないこととしています。
改造が個人の趣味にいるものであり修理代が賠償対象とならないかどうかは、専ら美観の観点からの改造かどうか、機能も向上しているか、そのような改造をした自動車が市場で高く流通しているかどうか等により判断されるものと思われます。
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