執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 相続人でなくとも相続財産を取得できる場合(相続財産分与)
相続財産を相続するのは、被相続人と一定の親族関係にある相続人です。
しかし、被相続人が相続人以外の人に財産を遺贈する場合、特別寄与制度が適用される場合には、被相続人以外の人でも相続財産を取得できます。
その他、従来から、相続人がいない場合に,被相続人の療養看護に努め,被相続人と特別の縁故があった者に財産の分与をする特別縁故制度があります。
以下、実例をみていきます。
2 特別縁故制度による財産分与についての裁判例
大阪高裁平成31年2月15日決定は、身寄りがなく、知的能力が十分でない被相続人を雇っていた雇い主に2000万円の分与を認めています。
同決定は、
・被相続人に4000万円以上の相続財産があったこと
・雇い主が働きを超える賃金を払ったり、財産管理をしてきたこと
・寄与が約44年間に及ぶこと
・雇い主が、生活面でも被相続人を献身的に支え,同人死亡後は,その法要等を執り行ったこと
を踏まえ、分与額2000万円としました。
大分家裁中津支部令和2年6月24日決定は、ダウン症であった被相続人の母方叔父について、
・平成2年頃から平成8年頃まで一定の期被相続人家族と生活を共にしており,その間,被相続人家族と一定程度交流し,被相続人家族を援助した
・被相続人が死亡した後には,葬儀等を主宰し,その費用負担をした
という状況において、約960万円の遺産から200万円の分与を認めました。
なお、同じ被相続人について、父方叔母に関して、「被相続人ないしその家族の関係は悪いものではなかったとうかがわれる。しかし,それを超えて,被相続人と生計を同じくしていたとか,その療養監護に務めた等の事情は見当たらない」として特別縁故制度による寄与は認められませんでした。
このように、療養監護など、被相続人の生活や財産形成への寄与の有無・内容・期間によって特別縁故者かどうか、特別縁故者だとして分与の金額が決められることになります。
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