執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 相続放棄と交通事故
交通事故で親族が交通事故で亡くなった場合、相続人が損害賠償請求権を相続します。
しかし、被相続人が事業に失敗して多額の負債を負っているような場合、相続放棄を選択することがありえます。
被相続人が亡くなり、自分が相続人となったことを知った時から3か月以内に相続人は相続放棄をし、債務を免れることができます。
しかし、同時に、財産も放棄することになります。
その場合、損害賠償請求権等、被相続人が交通事故により取得していた権利はどうなるのでしょうか?
以下、検討します。
2 交通事故による損害賠償請求権と相続放棄
交通事故で死亡した場合の損害賠償請求権は、そのほとんど(慰謝料の大部分、逸失利益)が一旦被相続人に取得され、その後相続人に相続されます。
ですから相続放棄により損害賠償請求権の大部分は得られなくなります。
しかし、遺族固有の慰謝料部分は別です。
交通死亡事故の場合、配偶者、親、子等の親族に、100~数百万円の固有の慰謝料が認められることがあります。参照:遺族に固有の慰謝料を認めた判決
これは相続財産ではありません。
ですから相続放棄後も請求できることになります。
3 人身傷害保険金と相続放棄
交通事故により、被害者が加入していた保険会社から人身傷害保険金が支払われることがあります。
人身傷害保険金は、相続人が相続によりう権利を取得するものであり、相続放棄した場合、この人身傷害保険金は払ってもらえないというのが一般的な理解です。
相続放棄をした相続人が人身傷害保険金の支払請求をした事案についての令和7年10月30日判決は、人身傷害保険金は被相続人に発生するとしています。参照:人身傷害保険金について判断した判例
同判決は、具体的な契約条項を踏まえ、「本件人身傷害条項において、人身傷害保険金は、人身傷害事故により損害を被った者に対し、その損害を填補することを目的として支払われるものとされているとみることができる。」、「そして、本件人身傷害条項では、人身傷害事故により被保険者が死亡した場合においても、精神的損害につき被保険者「本人」等が受けた精神的苦痛による損害とする旨の文言があり、逸失利益につき被保険者自身に生ずるものであることを前提とした算定方法が定められていることからすれば、死亡保険金により填補されるべき損害が、被保険者自身に生ずるものであることが前提にされているといえる。」と述べます。
その上で、「以上のような本件条項1の文言、本件人身傷害条項の他の条項の文言や構造等に加え、保険契約者の通常の理解を踏まえると、本件条項1は、人身傷害事故により被保険者が死亡した場合を含め、被保険者に生じた損害を填補するための人身傷害保険金の請求権が、被保険者自身に発生する旨を定めているものと解すべきである。」として、人身傷害保険金の請求権が被相続人について発生するとしています。
よって、基本的には、相続放棄をした場合、被相続人の人身傷害保険金の請求はできないことになります。
4 通勤中、業務中の交通事故と労災保険金
通勤中、あるいは業務中の交通事故については労災保険金が支給されます。
遺族の労災保険金請求権は相続されるものではないので、相続放棄をしても請求することができます。
5 交通事故加害者遺族の相続放棄
なお、交通事故加害者の遺族が相続放棄をすると加害者遺族は賠償責任を免れることになります。
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