横断歩道付近を横断した歩行者と自動車・バイクの交通事故の過失割合(横断歩道に信号機なし)

さいとうゆたか弁護士

1 横断歩道付近を横断した歩行者と自動車・バイクの交通事故の過失割合(横断歩道に信号機なし)

過失割合の判断基準

横断歩道付近を横断した歩行者と自動車・バイクの交通事故(横断歩道に信号機なし)の過失割合について、東京地裁民事交通訴訟研究会編・別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」33図では、歩行者の過失を基本30パーセントとしています。

その上で、夜間には5パーセント、幹線道路では10パーセント、横断禁止の規制ありで10パーセント、直前直後横断・佇立・後退で10パーセントの過失割合を歩行者に加算します。

住宅街・商店街等で5パーセント、児童・高齢者で10パーセント、幼児・身体障害者等で20パーセント、集団横断で10パーセント、車の著しい過失で10パーセント、車の重過失で20パーセント、歩車道も区別なしで5パーセントの過失割合を歩行者の過失から減算します。

バスから降りた乗客との事故の過失割合

比較的目立つ事故として、バスを降車した乗客が、バスの陰から横断したことにより生ずる事故があります。このような事故については、よくみられる事故であるため、自動車運転手としてはバスの陰から歩行者が出てくることを予測すべきであり、事故が発生した場合には自動車側に著しい過失等が認められ、歩行者の過失が減算される可能性があります。たとえば、大阪地裁平成27年2月27日判決は、「降車したバスの前から道路を横断しようとする歩行者のあることは十分予想されるところであるから,このような場合,被告には,前方左右を注視し,横断歩行者の有無に注意して安全な速度と方法で進行する注意義務があったというべきである。しかるに被告は,これを怠り,中央線寄りを漫然と進行した過失により,本件事故を惹起したものである。」として、バスの陰から乗客が横断してきた事故について、自動車側の過失を重くすべきことを指摘しています。

夜間・幹線・横断禁止の事例の過失割合

歩行者側に55%の過失を認めたものとして、岐阜地裁令和2年12月23日判決があります。

同判決は、

・本件道路は,車道の幅員が約20.9m,片側2車線ないし3車線を有する道路であって,最高速度が時速50kmに規制されていることを踏まえても車両がある程度高速で走行することが十分に予見できる道路であること

・横断禁止の規制がされていること

・本件事故現場は,岐阜市内における最大の繁華街の付近に位置しているが,本件事故の生じた時間帯に照らしても,人通りや横断者が頻繁に予測される状況とはいえず,証拠をみても,ほとんど人通りがみられないのであって,被告において横断歩行者の存在に一層注意すべき状況にあったとはいい難い。

として、歩行者側に55%の過失を認めました。

この事例では、基本30%、夜間で5%、幹線道路10%、横断禁止規制ありで10%の加算がされていると考えられます。

2 横断歩道の付近とは?

ここで問題となるのは、横断歩道の付近とはどの程度の距離のところを言うかです。

横断歩道付近の事故ではないとなると歩行者の過失割合が低くなるため問題となります。

東京地裁民事交通訴訟研究会編・別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」89頁は、

・交通量が多く、車が高速で走行している道路  40~50メートル以内

・それ以外の道路               20~30メートル以内

としています。

道路交通執務研究会編著「18訂版 執務資料 道路交通法解説」164頁は、33図の考慮要素と思われる道路交通法12条1項が「歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならない」との規定における「附近」について、「具体的に一律に定めることは困難である。結局、道路の状況、交通量等の具体的状況に照らし社会通念により判断するほかない」としつつ、「本条にいう付近も、おおむね『30メートル程度』と解して差し支えないと思われる」としているところです。ですから、同著においても、おおむね東京地裁民事交通訴訟研究会編・別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」と同じような基準であると言えるでしょう。

千葉地裁令和1年11月6日判決は、幹線道路ではない道路での事故について、「本件事故地点は本件交差点の約30メートル手前であり,横断歩道付近の事故との限界事例であること」を踏まえ、歩行者の過失割合を高めにしていると思われます。

このように、横断歩道付近か否か、限界事例の場合には、中間的な過失割合で判断されることもあるということになります。

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