村上市の三幸製菓火災 刑事責任はどうなる?

さいとうゆたか弁護士

1 村上市の三幸製菓火災と刑事責任

村上市の三幸製菓工場で発生した火事で亡くなられた方についてはご冥福をお祈り申し上げます。

この件について、亡くなられた方について労災保険や損害賠償の手続きがなされるべきことは当然です。

詳しくは火災と労災の記事を御参照ください。

さらに、この件については既に捜索手続きがなされており、刑事処分も視野に入ってきています。

以下、刑事処分の見通し等について、三幸製菓株式会社荒川工場火災事故調査委員会「三幸製菓株式会社荒川工場Fスタジオ家裁事故調査報告書(一部要約版)」(以下、「報告書」といいます)などを前提にご説明します。

 

2 報告書に記載されている事実関係

報告書では、三幸製菓工場では、

・「Fスタジオにおいて夜間に清掃業務に従事する清掃従業員については、避難訓練が日中に開催されており、夜間作業者を対象とした避難訓練が開催されたことはなかったことから、避難訓練に参加している者は存在しなかった」としています。

その結果、

・「在館者のうち焼・味付工程及び包装工程で従事していた者について、本件聴取調査で確認したところ本件出入口にある本件防火シャッターの存在及び機能を認識していた者は13人中2人、本件防火扉の存在を認識していた者は13人中4人であった」

等という状況であり、従業員が火災等の際に適切に避難しうる状況がなかったことがはっきりしています。

3 従業員全員に避難訓練を実施していなかったこと

三幸製菓工場において、従業員全員に避難訓練を実施していなかったことについて、業務上過失致死罪が成立する可能性があります。

この点、入居型介護施設での火災について業務上過失致死罪が成立するかどうかが問題となった事件についての前橋地裁平成25年1月18日判決は、「甲本館は4棟に分かれていて,建物の配置や出入口の位置は整然としておらず,建物内外の通路も入り組んでいた。このため,火災の状況に応じて,できるだけ安全で効率的な避難経路や避難誘導する入居者の順番を選択するには,事前の検討や指導が必要であった。」等として、避難訓練等を実施して避難経路などを周知させる必要があったのにしなかったことを業務上過失致死罪成立の1根拠としています。

三幸製菓の火災では、防火シャッターが閉まり、従業員が避難困難な状況にあったとも思われます。

そのような状況は想定されていたでしょうから、全従業員に対し避難訓練(防火シャッターが閉じた場合に避難用扉から避難するなどの対応も含む)がなされるべきでしたし、夜間の従業員に対する避難訓練も実施すべきでした。それにも関わらずそれらの訓練をしなかったことについて業務上過失致死罪が成立する可能性があると考えます。

4 最後に

以上のとおり、事実関係次第では業務上過失致死罪の成立もありうるところと思われます。

ご冥福をお祈りするとともに、刑事上、民事上、適切な対応がなされることを期待します。

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