火災・火事と労災

さいとうゆたか弁護士

1 火災・火事と労災

村上市の三幸製菓で多数の方が亡くなる火災事故が発生しました。

亡くなられた方についてはお悔み申し上げます。

火災、火事は人命に関わる事故であり、使用者は火災・火事が発生しないようにする義務、一旦発生した場合には従業員の生命健康が守られるようにする義務を負います。

その義務は果たされず、従業員の生命・健康が損なわれた場合、安全配慮義務違反等により損害賠償責任を負うことになります。

その場合、被災者あるいは遺族は、労災保険で賄われない損害について賠償請求をできる可能性があります。

2 火災・火事について賠償責任を認めた裁判例

火災・火事について使用者に賠償責任を認めた裁判例としては、京都地裁昭和58年1月31日判決があります。

これは社員寮に入っていた従業員が火事で亡くなったことについて、遺族が会社に賠償請求をしたものです。

同判決は、以下のとおり述べ、使用者側において、従業員を適切に避難させなかったことについて注意義務違反、不法行為を認定しています。

本件火災は被告会社の寮及び工場であるから、金子の消火活動は会社財産の維持保全のためであって被告の事業の執行に当るというべきである。そして金子としては右事業の執行に際し丁美を確実に避難させるかあるいは安全に避難したか否かについて確認し、もって丁美を安全に保護すべき注意義務があったのにかかわらずこれを怠り、単に工場の外に出ることを指示したことによって安易に丁美が避難したものと即断した過失により丁美を死亡するに至らしめたものというべきである。よって被告は金子の使用者として不法行為責任を免れない。

その他、使用者が消防法等の諸法令の定める義務に違反していたような場合にも使用者の安全配慮義務違反は認められうるでしょう。

例えば、消防法17条は以下のとおり定めます。

第十七条 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。

ですから、必要な消防設備を設置せず、被害が拡大したような場合、使用者は安全配慮義務違反として賠償責任を負うことになります。

3 火災、火事について刑事責任を認めた裁判例

使用者が防火等の対応を適切に講じていなかった場合には刑事責任が認められることもあります。

入居型介護施設における火災で入居者が亡くなった事件について、前橋地裁平成25年1月18日判決は、理事長について業務上過失致死罪の成立を認め、禁錮2年執行猶予4年の判決を言い渡しています。

同判決では、①平素から職員を指揮して避難訓練を実施し,職員間に火災発生時の避難誘導の方法等を周知徹底させる義務,②煙感知器、住宅用火災警報器を設置して,火災の早期発見,通報を図る義務,③火災が発生した場合には入居者を適切に誘導して安全な場所に避難させることができるように,職員を新規採用するなどして,少なくとも夜間当直職員2人を常時配置すべき義務があったのに、それらの義務が果たされていないとしました。

これは介護施設に関する裁判例ですが、工場などについても、適切な避難訓練の実施、火災の早期発見の機器設置等の義務が履行されていない場合、業務上過失致死罪の成立が認められることはあるでしょう。

4 新潟で労災のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください

労災についての一般的な記事

労災と損害賠償についての記事

労災保険についての記事

当職が担当したANAクラウンプラザホテル新潟過労労災事件についての記事

新型コロナと労災についての記事

もご参照ください。

新潟で労災、過労死のお悩みは弁護士齋藤裕にご相談ください。

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

弁護士費用はこちらの記事をご参照ください。

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です