路上横臥者と自動車の交通事故の過失割合

交通事故

1 路上横臥者と自動車の交通事故の過失割合

民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版は、路上横臥者と自動車の交通事故の過失割合について、

ⅰ 昼間の場合、横臥者の過失割合  基本30%、幹線道路で10%+、住宅街・商店街等で5%−、児童・高齢者で10%−、幼児・身体障害者等で20%−、自動車の著しい過失で10%−、自動車の重過失で20%−

ⅱ 夜間の場合、横臥者の過失割合  基本50%、幹線道路で10~20%+、住宅街・商店街等で10~20%−、児童・高齢者で10%−、幼児・身体障害者等で20%−、明るいところで10%−、自動車の著しい過失で10%−、自動車の重過失で20%−

としています。

2 裁判例

東京地裁令和2年11月25日判決

重過失の認定事例としては、東京地裁令和2年11月25日判決があります。

同判決は、夜間における路上横臥の事例について、「被告が被告車の前照灯をロービームにしたままで,その照射範囲が限られるにもかかわらず,最高速度を時速20km超過する時速約70kmで進行したこと,被告は衝突するまで路上に転倒していた原告車及び亡Bに気が付いておらず,前方不注視の程度は大きいといえることなどに鑑みれば,本件における過失割合は,亡B30%,被告70%と認めるのが相当である。」としていますが、自動車の重過失を認定し、20%修正をしたと考えられます。近時においてはロービームが過失割合を修正する要素となることに留意すべきでしょう。

大阪地裁令和4年2月18日判決

重過失と著しい過失の中間的な場合と思われるケースとして、大阪地裁令和4年2月18日判決があります。

同判決は、「被告が,夜間,路上横臥していたCを発見することは困難であったというべきであり,Cにも相応の落ち度があるといわなければならない。他方で,被告が,指定最高速度を時速約27kmも超過する速度で被告車を運転していたことがCの発見を難しくしたともいえる。そうであれば,本件の過失相殺率については,35%とみるのが相当である。」としています。

なお、同判決は、「原告は,徐行義務が課されている横断歩道付近で本件事故が発生していることから,時速47km以上も超過したものとみるべきであるとして,被告の重過失を主張しているが,路上横臥者は横断歩道上を通行中ではなく発見し難いことには変わりはないので,同主張は採用できない。」として、横臥者については横断歩道の付近かどうかは過失割合に影響しないとしており、注目されます。

夜間事故ですから、基本的な過失割合が50%であり、15%修正されていることになります。

よって、時速27㎞の速度オーバーが重過失と著しい過失の中間に位置付けられていると評価されうると思います。

横浜地裁平成30年9月13日判決

第1事故が原因で被害者が路上横臥していて、第2事故に遭遇した場合についても1の基準で判断されることがあります。

横浜地裁平成30年9月13日判決は、夜間横臥の事例について、「亡Aが死亡するに至った直接の原因となったのは第2事故であると認められるところ,第2事故における亡Aの過失割合は50パーセントであり,亡Aが路上に横臥する原因となった第1事故の亡Aの過失割合は70パーセントであるから,本件の絶対的過失割合は,亡A35パーセント,被告Y1 15パーセント,被告Y2 50パーセントとなると認められる。」として、夜間横臥により生じた第2事故について横臥者と自動車の過失を50:50としつつ、全体として被害者:第1事故の加害者:第2事故の加害者=35:15:50としています。

3 新潟で交通事故のご相談は弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)へ

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

交通事故についての一般的な記事

弁護士費用はこちらの記事

もご参照ください。

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です