
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 相続、遺産分割と葬儀費用
被相続人の葬儀を行った人が、その葬儀費用について相続財産から拠出すべきと主張するのはよくあることです。
例えば、相続分2分の1のAさん、Bさんがいて、遺産が1000万円、Aさんが遺産から葬儀費用100万円を拠出した場合に、1000万円-100万円を折半し450万円ずつ取得することになるのか(この場合、葬儀費用を相続財産から拠出することが認められることになります)、1000万円を折半し、Aさんは500万円しかもらえないあ(100万円はAさんの負担なのでAさんの手取りは400万円となるのか)です。
そして、遺産分割調停では、葬儀費用を相続財産から拠出する取扱いとする例は多くあります。
しかし、協議で解決せず、審判等となった場合、葬儀費用を相続財産から拠出するということには中々なりません。
以下、ご説明します。
2 遺産分割審判における葬儀費用の扱い
遺産分割に関する神戸地裁平成11年4月30日決定は、「葬儀は,死者を弔うために行われるものであるがこれを実施挙行するのはあくまでも死者ではなく遺族等の死者に所縁のあるものであることからすれば,葬儀の費用は相続債務と見るべきではなく,葬儀を自己の責任と計算において手配等して挙行した者(原則として喪主)の負担となると解すべき」としています。
葬儀費用を相続財産から拠出できないとの考えが主流と思われます。
なお、東京地裁令和4年11月25日判決は、葬儀費用は、「被相続人の遺言及び相続人間の合意が存在せず、葬儀費用の負担者及び負担額等が判然としない場合においては、特段の事情がない限り、相続財産の負担とするのが相当である。」、相当額の範囲内において、相続人らの合意により、遺産分割協議において精算することができるとしています。しかし、これも相続人らの合意がない場合には、遺産分割で相続財産から葬儀費用を拠出することはできないとしていますので、主流の考えと反するものではないと思われます。
3 地方裁判所で裁判をした場合と葬儀費用の負担
2は遺産分割の審判での取扱いですが、地方裁判所で訴訟をした場合にはどうなるでしょうか?
地裁で葬儀費用の負担を命ずることができないとした裁判例
この点、東京地裁令和4年1月24日判決は、「葬儀費用は相続開始後に生じる費用であって相続債務となるものではなく,発生する費用は葬儀の方式や規模等によって異なるものであるから,費用負担について別段の合意がある場合や相続人らが協議のうえで葬儀の内容等について決定したような場合などを除き,原則として葬儀を実際に執り行った主催者である喪主が負担するものと解するのが相当である。これを本件についてみると・・・Aの葬儀については父である原告がその内容等を決定したうえで主催し,葬儀会社等に費用を支払ったものと認められるから,原則として原告が本件葬儀費用の支払義務を負担するものというべきである。」として、喪主が葬儀費用を負担すべきであり、他の相続人に請求できないとしているところです。
地裁で葬儀費用の請求をすることができるとした裁判例
他方、上記東京地裁令和4年11月25日判決は、「相続財産から葬儀費用を支出することにつき、相続人ら間において合意に至ることができず、遺産分割協議において精算する方法がとり得ない場合には、民事訴訟により、相続人らに対して、不当利得として、当該相続人が負担すべき金額を請求することができ、その場合の費用の負担額は、各法定相続分に従って定めることとするのが公平の理念にかない、相当であると考えられる。」としています。また、「葬儀費用の額が相当額の範囲内を超える場合にはその超えた部分につき、また、葬儀費用を相続財産から支出することが著しく相当性を欠くような特段の事情が存する場合においては、当該事案における個別具体的な事情に照らして、事案ごとにその最終的な負担者を定めることとなるものと考える。」としています。
このように地裁で裁判を起こした場合に葬儀費用を請求できるかどうかについては見解が分かれているのです。
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