廃業と休業損害(交通事故)

交通事故

1 廃業と休業損害(交通事故)

交通事故による受傷で自営業者が廃業を余儀なくされる場合もありえます。

そのような場合に廃業に関して損害賠償が認められることもあります。

例えば、高松高等裁判所平成13年3月23日判決は、事故により廃業を余儀無くされたという事案において、開業費用の一定割合を賠償金として認めました。

まず、同判決は、以下のとおり、事故の影響で廃業をしたとの認定をします。

「□□美容室」は平成10年5月ころまでは営業していたが(ただし,本件事故後,仕入金額は減少しているから,利益も減少していたと推測される。),そのころ,廃業し,被控訴人は,同美容室の建物を賃貸人に明け渡したこと,前記建物の賃貸借契約においては,賃借人である被控訴人が,造作買取請求権及び有益費償還請求権を予め放棄するかのような約定が存することが認められる。前記認定事実によれば,被控訴人は,本件事故後も従業員を雇用して美容室の経営を継続していたが,自らが美容師として就労できないことから,結局平成10年5月ころに至って廃業を余儀なくされたものと推認される。」

廃業については、加害者側において事故前から事業が経済的に破綻していたとの主張がありましたが、裁判所は以下のとおり赤字ではなかったとして事故と廃業の因果関係を認めました。

「控訴人は,被控訴人は本件事故前から経済的に破綻状態にあったから,本件事故と廃業との間には因果関係がないと主張する。しかし,乙16号証によれば,被控訴人は,本件事故前から賃料及び仕入代金等を滞納していたことが認められ,開業時の借入金債務の返済等の負担が大きかったことは被控訴人が自認しているものの(甲35),前記美容院が,本件事故前に経常収支がマイナスとなる赤字経営であったと認めるに足りる証拠はない。赤字経営でないとすると,債務返済のためにも,被控訴人は,本件事故に遭わなければ美容院の経営を継続していたと推認されるから,控訴人の前記主張は採用できない。」

その上で、以下のとおり、開業資金の約5割について賠償を認めました。

「被控訴人が開業時に支出した前記費用は,主に内外装工事費や取り外して搬出することが困難な諸設備の設置工事費用であること,賃貸借契約の内容からして,被控訴人が有益費償還請求権等を行使して前記投下資本の回収を図るのは困難と解されることのほか,開業時から廃業までの期間経過による内外装及び諸設備の劣化,陳腐化等の諸事情に照らすと,被控訴人が開業時に支出した前記費用564万6200円の約5割に相当する280万円が本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。」

廃業をした場合でも労働能力がある範囲内においてどこかで稼動できたという言い分は可能です。

しかし、それでも自営をしていた事業に従事できなくなれば投資資金がムダにはなりますので、廃業の場合に投下資金の一定割合の賠償を認めるのは合理的と考えられます。

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