高次脳機能障害の後遺障害等級(交通事故)

交通事故

1 高次脳機能障害の等級について(交通事故)

高次脳機能障害とは、認知、行為、記憶、思考、判断、言語、注意の持続などが障害された状態をいいます。

その程度に応じ、以下のとおり後遺障害等級が認定されます。

2 後遺障害等級1級の高次脳機能障害

高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの

⇒1級

これは、

ⅰ 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの

ⅱ 高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの

のいずれかに該当するものです。

3 後遺障害等級2級の高次脳機能障害

高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの

⇒2級

これは、

ⅰ 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの

ⅱ 高次脳機能障害による認知症、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの

ⅲ 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの

のいずれかに該当するものです。

具体的な事例としては、千葉地裁松戸支部令和1年7月26日判決があります。

同判決は、「原告X1には,著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって,一人で外出することができず,日常の生活範囲は自宅内に限定されており,身体的動作的には排泄,食事などの活動を行うことができても,生命維持に必要な身辺動作には,必要に応じて家族からの声掛けや随時の監視を欠かすことができないものに当たるといえる。なるほど,原告X1は,歩行も可能ではあるものの,転倒の危険があり,声掛けや看視が必要であるから,後遺障害別等級・別表第一の2級3号に該当するというべきである。」として2級の後遺障害認定をしています。

4 後遺障害等級3級の高次脳機能障害

生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの

⇒3級

これは、

ⅰ 4能力(意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会的行動能力)のいずれかが全部失われるもの

ⅱ 4能力の2つ以上の能力の大部分が失われるもの

のいずれかに該当するものです。

具体的な事例としては、神戸地裁令和3年8月27日判決があります。

同判決は、「労災の基準では,意思疎通能力,問題解決能力,持続力・持久力及び社会行動能力の4能力のうち,いずれか1つ以上の能力が全部失われた場合,いずれか2つ以上の能力の大部分が失われている場合には,3級に該当し,いずれか一つ以上の能力の大部分が失われている場合,いずれか2つ以上の能力の半分程度が失われている場合には,5級に該当するものとされているところ,原告については,前記のとおり「10分前のことは忘れている,ノートにメモをつけても日付の認識力低下のために,記載された内容がいつの出来事であるのかを把握できない,そのため,日常生活を安全に送るためには常に夫の援助を必要とする」旨診断されるほど,重度の記憶障害があることに照らすと,記銘・記憶力などを判断の主要な要素とする,職場において他人とのコミュニケーションを適切に行えるかどうか等について判定される意思疎通能力が,「相当程度喪失」という程度に止まるものであるか否かは疑問がある。また,前記(1)の認定事実のとおり,重度の記憶障害のほか,見当識低下,自発性低下が著明で,外出,屋外での単独での歩行はできない状態となっていることに加え,前記のとおり,右膝の疼痛等の症状も残存していることを踏まえると,原告は,神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないものとして,単純に後遺障害等級5級とすることにも,疑問がある。他方,前記(1)の認定事実のとおり,原告が一定の家事を担っていると見る余地もあることを考慮すると,原告の後遺障害の程度としては,後遺障害等級3級と5級の間にあるものと捉えるのが相当である。」として、3ないし5級の後遺障害等級に該当するとしています。

 

5 後遺障害等級5級の高次脳機能障害

高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの

⇒5級

これは、

ⅰ 4能力のいずれか1つの能力の大部分が失われているもの

ⅱ 4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの

のいずれかに該当するものです。

具体的な事例としては、神戸地方裁判所令和3年3月23日判決の事例があります。

同判決は、「記憶の持続が困難であることから,意思疎通能力や問題解決能力は相当程度喪失していると解されるが,身の回りの動作や買い物などの行動は概ね可能で,意欲の低下を除き感情面や情緒面での問題は認められないから,見守りや援助があれば,作業負荷に対する持続力や持久力,社会行動能力が一定の限度で認められる」として5級の後遺障害を認定しています。

6 後遺障害等級7級の高次脳機能障害

高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの

⇒7級

これは、

ⅰ 4能力のいずれか1つの能力の半分程度が失われているもの

ⅱ 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの

のいずれかに該当するものです。

具体的な事例としては、福岡高裁令和1年6月13日判決があります。

同判決は、「本件事故後,認知障害(記憶・記銘力障害,注意・集中力障害等),行動障害(周囲の状況に合わせた適切な行動ができないなど),人格変化(衝動性,易怒性,自己中心性等)の顕れとみられる行動が目立っている」、「本件事故後,断続的にではあるが就労しており,日常生活における基本的な身の回りの動作についても自立して行っており,また,入通院先での検査等,刑事手続における取調べ,刑事裁判における被告人質問や本件訴訟における本人尋問では,問われた内容に即した回答をしていることが認められるから,一定程度の意思疎通能力や社会行動能力は保たれている」という事例で、7級の後遺障害の認定をしています。

7 後遺障害等級9級の高次脳機能障害

通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの

⇒9級

これは、4能力のいずれか1つの能力の相当程度が失われているものです。

具体的には、神戸地方裁判所令和2年2月28日判決の事例があります。

同判決は、「作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力には特に問題はないが,意思疎通能力については,言語の流暢性や注意力に問題があること,原告が,本人尋問において,質問内容を理解できずに質問を繰り返す必要があったり,回答までに一定の時間を要したりしたことからは,他者と意思疎通を図ることに一定の困難を伴うことは容易に推認できる。そして,WAIS-Ⅲの処理速度指数が境界域にあったこと,標準注意検査法において注意力の低下が認められたことからすれば,問題解決能力においても一定の支障が生じているものと推認され,空間把握能力においても日常生活における支障が生じていると認められる。他方で,上記(エ)の検討結果及び本人尋問の結果を踏まえても,意思疎通能力,問題解決能力については,いずれも他者の援助を必要としているという程度に達しているとまでは認められないから(本件日常生活状況報告においても,家庭,地域社会,職場,または学校における行動や人間関係に,ごくわずかな障害があるとされているにすぎない」として9級の後遺障害を認定しました。

8 後遺障害等級12級の高次脳機能障害

通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの

⇒12級

これは、4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものです。

9 後遺障害等級14級の高次脳機能障害

通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため軽微な障害を残すもの

⇒14級

これは、MRI,CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認めれるものです。

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