会社役員と休業損害 新潟県での交通事故は弁護士齋藤裕に御相談ください

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 会社役員と休業損害(交通事故)

交通事故で会社勤めの人がケガをし、やむをえず欠勤した場合、基本的には減収分が休業損害として賠償の対象となります。

しかし、会社役員が受け取っている役員報酬については、その一部が労務の対価ではなく、実質的には配当などの意味を持つことがあります。

そのため、必ずしも役員報酬全額について休業損害が認められるわけではありません。

収入の一部についてのみ休業損害を認めた事例

例えば、大阪高裁平成30年11月22日判決は、「控訴人会社は本件事故当時,正規従業員3名,アルバイト従業員2名を雇用していたことが認められ,小規模ではあるものの会社組織を採用している以上,役員報酬には労務提供の対価とは評価できない部分が存するといえる。そして,控訴人会社の業務内容,想定される従業員の給料額などを考慮すると労務対価部分は80%とするのが相当である。」として、労務対価部分を80%と認定しています。なお、会社は建築請負業であり、被害者は営業や現場作業に従事していました。

労務対価部分の割合を認定する証拠がない場合、賃金センサスを用いて算定することもあります。

例えば、横浜地裁平成30年3月9日判決は、「給与収入の中には,労務提供の対価に相当する部分と利益配当の実質を持つ部分とがあることが想定されるところ,これらを明確に区別して把握し得る証拠資料がないことからすると,上記給与収入額に基づいて原告の休業損害額を算定することは相当とはいえない。そこで,原告については,労務提供の対価に相当する収入として,少なくとも,本件事故当時の原告の年齢(36歳)に対応した賃金センサス男性学歴計35~39歳の年収額である533万5000円程度の収入があったものと認め,同金額に基づいて休業損害額を算定することとする。」としているところです。

収入の全部について休業損害を認めた事例

しかし、1人会社であること、役員が業務を全部やっていたなどの事情があれば、役員報酬全額分について休業損害として認められることもあります。

例えば、東京地裁平成28年11月17日判決は、以下のとおり述べ、役員報酬360万円のところ、ほぼそれに匹敵する345万9400円を休業損害の対象として考慮すべきとしました。

原告は,Eから役員報酬として360万円(月額30万円)の支払を受けていたのであり,その基礎収入は同額とすべきである旨の主張をする。
しかしながら,証拠(甲87,90,乙1,2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,① Eは,原告らの自宅を本店所在地とする一人会社であり,代表取締役であるAが,印刷機器の販売等を行っていたこと,これに対し,原告は,家事労働に従事しつつ,その経理事務等を手伝っていたにすぎないこと,② 監査役であるGは,本件事故当時,Eの経理事務等を手伝い,月額8万円の支払を受けていたことが認められ,かかる事実に照らすと,原告の役員報酬のうち労務提供の対価に相当する部分(原告の基礎収入)は345万9400円(平成22年賃金センサス女性学歴計全年齢平均賃金)とするのが相当である。

ここでは、1人会社であることなどを踏まえ、賃金センサスを基準として休業損害額が定められています。

千葉地裁平成6年2月22日判決は、以下のとおり述べ、役員において肉体労働に従事することが多かったことなどから、役員報酬全額を休業損害の基礎となるものとしました。

反訴原告X1が建物解体工事・建材卸業等を主たる営業目的とする反訴原告会社の代表取締役であることは、当事者間に争いがなく、乙第一五、第一六号証、第一八、第一九号証及び反訴原告X1本人尋問の結果によれば、反訴原告会社は、平成二年二月二六日の臨時社員総会で、同年一月以降の反訴原告X1の役員報酬を月額金一〇〇万円とすることを議決し、反訴原告X1は、役員報酬として、同年一月から同年五月までに合計金五〇〇万円の支給を受けたが、本件事故後、職務を遂行することができなかったため、同年六月から同年一一月までの六か月分合計金六〇〇万円の支給を受けなかったこと、反訴原告会社は反訴原告X1の個人会社であり、同反訴原告の職務内容も、受注の際の見積りのほか、ダンプ・重機の運転及び土砂・廃材等の積み降ろし等の肉体労働が多く、右役員報酬はその全額が労務提供の対価と見るべきであり、税務上も給与所得として取り扱われていることが認められる。そうすると、本件事故と相当因果関係のある反訴原告X1の休業損害は、同年六月から同年八月までの三か月分の右役員報酬合計金三〇〇万円であると認めるべきである。

このように、会社役員の交通事故については、会社や勤務の実態などにより休業損害額がかわってくることがあります。

それらの適切な主張立証が重要となります。

2 会社の損害

従業員がいないか、ごく少数の会社で、役員と会社が経済的に一体をなすような場合、役員が休業し、それにも関わらず会社が役員報酬を支払い続けた場合、役員報酬のうち、労務対価部分については会社が加害者に賠償請求できる可能性があります。

さいたま地裁令和3年5月28日判決は、「被害者が個人事業として営んでいた土木建築業を平成26年6月1日,法人成りしたものであり,被害者が株式を全部保有している。被害者が役員を務める会社は,平成27年11月以降の従業員数が3ないし5名(うち2名は被害者の子)という小規模な同族会社であり,被害者が役員を務める会社の事業に不可欠な重機(ユンボ)の運転免許を有するのは被害者だけであることなどからしても,被害者はその役員を務める会社において他者により代替できない地位にあり,両者は経済的に一体である。」と判断し、会社が被害者が休業しても労務対価部分(8割)も含めて役員報酬を払い続けたとして、会社から加害者に対する役員報酬の8割分の賠償請求を認めました。

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