過労死(脳血管・心疾患)は弁護士齋藤裕にご相談ください

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

新潟県で過労死・過労自殺でお悩みの方は、新潟市民病院医師過労死事件で実績のある弁護士齋藤裕にご相談ください。

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目次

1 脳・心臓疾患(労災)と長時間労働

2 労災認定されるための労働時間以外の要素

3 発症に近接した時期における特に過重な業務とは何か?

4 異常な出来事とは何か?

5 バス運転手の過労死

6 ルート営業者と過労死

7 過労死と高血圧

1 脳・心臓疾患(労災)と長時間労働

目次

長時間労働による脳・心臓疾患が労災認定される基準

長時間労働の立証方法

長時間労働による脳・心臓疾患が労災認定される基準

長時間労働などの過労により脳・心臓疾患( 脳内出血(脳出血)、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、虚血性心疾患等、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)、解離性大動脈瘤)に罹患した場合、労災認定されることがあります。

過労でなくとも脳・心臓疾患に罹患することはあります。

労災認定されるのは、長時間労働などの過労などにより病変が自然的経過を超えて増悪し、発症した場合です。

どの程度の長時間労働などがあれば病変が自然的経過を超えて増悪し発症したとして脳・心臓疾患が労災と認定されるかについては、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」が基準とされます(参考:過労死についての厚労省のサイト)。

同基準では、

ⅰ  発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

ⅱ  発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること

を踏まえて判断するとされています。

ここでいう時間外労働時間数は、1週間当たり40時間を超えて労働した時間数です。

残業代を請求するときの時間外労働時間とは異なることに注意が必要です。

月80~100時間というのが一応の目安とはされていますが、80時間を下回ると必ず労災として認定されないというわけではありません。

例えば、勤務の不規則性、出張の多さ、交代制勤務・深夜勤務、作業環境(温度環境、騒音、時差)なども考慮されることになります。

長時間労働の立証方法

そうはいっても、長時間労働の有無が要となりますので、その立証をどうするかが極めて重要です。

私が担当した新潟市民病院医師過労死事件では、電子カルテ、セキュリティの記録、駐車場の出入り記録、ETCの記録などを入手することができ、客観的な労働時間立証が可能となりました。

その他の職種であっても、パソコンのログイン・ロクアウトの記録、セキュリティの記録があると立証をしやすくなるでしょう。

業務の通常の過程を考慮して労働時間を立証できる場合もあります。

例えば、朝11時開店のラーメン屋の場合、開店前の仕込みに通常3時間かかるのであれば、朝8時から勤務していることが推認される可能性があります。

2 労災認定されるための労働時間以外の要素

1のⅱの基準をもう少しで満たさない場合、以下の労働時間以外の要素を考慮し、総合判断で労災認定されうることが上記基準で明記されています。

ⅰ 勤務時間の不規則性

・拘束時間の長い勤務(拘束時間とは、実労働時間以外の休憩時間や仮眠時間も加えた時間、始業から終業までの間の時間です)

・休日のない連続勤務(ここでいう休日は暦日で確保される必要があります)

・勤務間インターバルが短い場合(勤務時間がどのくらい短いか、短いことがどの位の頻度であるか、連続しているかどうかなどを見ます)

・不規則な勤務・交代制勤務・深夜勤務

ⅱ 事業場外における移動を伴う業務

・出張の多い業務(海外出張について、4時間以上時差がある場合、時差も考慮されます)

・その他事業場外における移動を伴う業務

ⅲ 心理的負荷を伴う業務

ⅳ 身体的負荷を伴う業務(重量物の運搬作業、人力での運搬作業など、身体的負荷が高い場合です)

ⅴ 作業環境

・温度環境(寒冷・暑熱の程度、防寒・防暑衣類の有無、温度差、水分補給などが考慮されます)

・騒音(おおむね80dbを超えるもの)

1のⅱの基準をあと少しで満たさない場合でも、2の要素がある場合には、労災認定されることがありうることが明確化されたことになり、今後の労災認定が今までより柔軟化されることが期待できます。

なお、もう少し足りないというのは、1ケ月あたり65~70時間以上の時間外労働がある場合が想定されていると考えられます(令和3年10月、厚生労働省労働基準局補償課

職業病認定対策室「脳・心臓疾患の労災認定実務要領」25頁)。

3 発症に近接した時期における特に過重な業務とは何か?

発症に近接した時期における特に過重な業務についても、脳心臓疾患について労災認定される可能性があります。

これは、発症前おおむね1週間に、業務量、業務内容、作業環境などを考慮し、特に過重な身体的、身体的負荷となるものかどうかで判断されます。

特に発症から前日までの業務が最重視されます。

過度な業務かどうかは、発症直前から前日までに特に過度な長時間労働があるか、発症前おおむね1週間において継続して深夜にわたる長時間労働が継続しているか(労働密度が低いものは除く)、2であげた事情があるかを検討して決することになります。

 

4 異常な出来事とは何か?

発症直前から前日までに異常な出来事があった場合も労災認定される可能性があります。

ア 極度の緊張、興奮、恐怖、驚愕等の強度の精神的負荷を引き起こす事態

イ 急激で著しい身体的負荷を強いられる事態

ウ 急激で激しい作業環境の変化

があった場合に異常な出来ごとがあったとされます。

具体的には、

ⅰ 業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合

ⅱ 事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合

ⅲ 生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合

ⅳ 著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行などを行った場合、

ⅴ 著しく暑熱な環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業環境下での作業、温度差のある場所への頻回な出入りを行った場合

が例示としてあげられています。

5 バス運転手の過労死

長野地裁平成28年1月22日判決は、観光バス運転手が脳出血で死亡した事件について、労災との判断を示しました。

同事案では、労働時間は基準に達していませんでしたが、他の要素から業務起因性を認定しています。

同判決は、まず、以下のとおり、連続勤務で、休暇が少なく、疲労回復ができないことについて判断をします。

「本件疾病発症前のおおむね1か月間における亡Aの具体的な勤務状況(上記1(2))をみても,亡Aの取得した休暇は合計7日であり,平成20年7月19日から同月27日までの9日間,同月29日から同年8月1日までの4日間及び同月3日から同月8日までの6日間,それぞれ深夜または早朝にわたる業務や宿泊を伴う業務に連続して従事する状況であった。また,亡Aが本件疾病発症前の1か月間に2日以上続けて休暇を取得したのは,平成20年8月9日ないし同月11日並びに同月14日及び同月15日に止まり(それ以前においては,同年7月13日及び同月14日〈乙19,20〉),亡Aは,1か月の間,ほとんど多くとも1日の休みを挟んで本件業務を継続していたことになる。このような亡Aの勤務状況及び上記(ア)のような本件業務の特性に照らすと,1日の休暇によって本件業務による疲労を完全に回復することは困難といえるから,亡Aは,この間に疲労を回復できないまま次の業務に就労するような状況であったと推認される。」

また、不規則勤務であった、「休憩時間ではあるものの完全に業務から解放されていたとはいえない部分があったのであって,亡Aは労働時間以外にも一定の精神的緊張を負っていた」、乗客への対応も必要であった、宿泊を伴う業務が含まれていた、「本件業務は,上記のとおり,時には深夜,長時間にわたって乗客を乗せてバスを運転するというものであり,精神的緊張を伴う勤務に該当するもの」などと認定し、「本件業務は,認定基準における負荷要因のうち,不規則な勤務,拘束時間の長い勤務,出張の多い業務,交替制勤務・深夜勤務及び精神的緊張を伴う業務に該当するものと解するのが相当である。」との判断を示し、労災との認定をしました。

観光バス運転手については比較的同様の勤務をしている人が多いと思われ、参考になる裁判例かと思います。

また、労働時間以外の要素で過労死を認定した事例としての価値も高いと思います。

6 ルート営業者と過労死

福岡高裁宮崎支部平成29年8月23日判決は、ルート営業をしていた労働者が心臓性突然死をした事例について、労災として業務起因性を認めました。

比較的労働時間が短い労働者について過労死を認めた事例として参考になると思われるので、ご紹介します。

同判決は、以下のとおり述べ、労働者が心臓性突然死をしたことについて業務起因性を認めました。

「亡Aは、本件発症の6か月前から、平均して2時間を超える時間外労働が恒常化していたところ、本件発症前の約1か月間については、亡Aの所属していた営業部の繁忙期とされる4月末から5月初めの連休前後の時期が含まれており、平成24年4月23日から同月28日の週は終業時刻が所定終業時刻を1時間ないし3時間以上超える残業が続いていたほか、連休中を含めて連続して休日が取れたのは1回(同年5月12日及び13日)のみであったことに加えて、同月16日に本件クレームが発生した後は、亡Aは、通常業務に加えて本件クレームへの対応を余儀なくされ、時間外労働を強いられていた(その時間外労働時間が推計による時間(終業時刻を午後6時52分として推計した時間)を超えていた可能性が高い。)のである。異常のような亡Aの本件発症前の業務の内容、態様、とりわけ本件発症直前の業務の内容、態様に鑑みると、亡Aは、営業部の連休前後の繁忙期に続いて起きた本件クレームへの対応などの業務により強度の精神的、身体的負荷を受けていて、本件発症直前には強度のストレス、睡眠不足、疲労の状態にあったと認められるのであり、これらが本件発症の誘因となったとみるのが合理的かつ自然」というべきである」

このように、労働時間のみならず、クレームへの対応、労働時間の変化という要素も考慮して業務起因性の判断をしています。

なお、判決は、当該労働者は、ブルガダ症候群であり、その心停止がブルガダ症候群による心室細動によって引き起こされた可能性は否定できないとしつつ、それでも上記の事情から、「本件発症は亡Aが従事していた業務に内在する危険が現実化したものと評価するに十分であり、本件発症と亡Aの業務の間に相当因果関係を認めることができる」としました。

労基署においては、かなり労働時間に偏重した判断がなされがちです。

しかし、裁判所においては、それ以外の要素も含め判断され、労基署での判断が覆ることもあります。

労働時間が十分ではない事案においては、それ以外の労働の量的・質的要素を適切に主張立証することが重要なのです。

7 過労死と高血圧

過重な長時間労働は脳心臓疾患のリスクを高めます。

他方、高血圧も脳心臓疾患のリスクを高めます。

高血圧等の素因なく、長時間労働で脳疾患となり、過労死等した場合、労災保険や損害賠償の判断は比較的容易です。

しかし、高血圧等の素因があった労働者が長時間労働をし、その結果脳心臓血管にり患し過労死等した場合、高血圧と過労という2つの要素をどう考慮するかについて難しい問題が生じます。

過労死と高血圧についての裁判例(5割の素因減額をした事例)

この点、横浜地裁令和2年3月27日判決は、高血圧の労働者に長時間労働により脳出血が生じ、死亡したケースについて以下のような判断をしています。

まず、同判決は、以下のとおり、発症前6か月において80~100時間の時間外労働があったとして、脳出血と長時間労働との間に因果関係を認めます。

発症前6か月間についてみると,労働時間以外の負荷要因は特にみられないものの,発症前4か月間における時間外労働時間の平均が1か月当たり80時間を超えており,労働密度が特に低いといった状況は認められない。さらに,発症前2か月間における時間外労働時間の平均が1か月当たり98時間とほぼ100時間に近くに及んでおり,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に従事していたと認められる。したがって,本件脳出血は業務上の疾病に該当すると考えられる。」

そして、会社が、「時間外労働を制限するなどの方法によって業務の負担を軽減する義務を負っていた」のに果たさなかったとして、安全配慮義務違反も認めます。

しかし、「被災労働者については,被告会社の実施する健康診断において,平成13年5月以降,継続して高血圧を指摘されて産業医との面談が行われたにもかかわらず,少なくとも平成19年以降に病院を受診せず,会社関係者に対して病院を受診しているなどと虚偽の事実を述べ,また,家族に対しても健康診断の結果を伝えずに高血圧が徐々に増悪したこと,脳出血の危険因子である飲酒を本件脳出血の発症時点まで継続していた」として、7割の素因減額、つまり損害額の7割カットを行いました。なお、血圧は、210/120等と計測されています。

これに対し、控訴審の東京高裁令和3年1月21日判決は、横浜地裁判決と同様、因果関係と安全配慮義務違反を認めつつ、7割の減額分を5割にしています。

これについて、東京高裁は、「会社としては自らの健康状態を十分に省みることなくその職責を果たそうとする職務に熱心な労働者が存在することも考慮した職場環境を構築すべきであるから、被災労働者による業務遂行方法に健康管理の観点から見て相当ではない点があったとしても、これを過失相殺の類推適用の考慮要素として過大評価すべきではない」と述べています。

職務熱心な労働者の特性をとらえた判断であり、極めて穏当かと存じます。

このように、高血圧の素因がある場合、長時間労働と脳心臓疾患との間に因果関係が認められても、素因減額で損害額が減額される場合があることに注意すべきでしょう。

過労による脳内出血と高血圧についての裁判例(1割の素因減額)

大阪地裁令和7年3月24日判決は、高血圧の素因を持っていた労働者が、過労により脳内出血を発症した事案について、使用者に損害賠償を命じましたが、1割のみ素因減額をしました。参照:過労による脳内出血についての裁判例

同判決は、

ⅰ 発症前1か月の時間外労働時間数は80時間28分、発症前6か月間の平均時間外労働時間は81時間35分であることが認められ、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及
び虚血性心疾患等の認定基準について」(令和3年9月14日付け基発0914第1号厚生労働省労働基準局長通達)に照らして、業務と発症との関連性が強いと判断できる、

ⅱ 被災労働者が、上記期間、店長として、通常業務のほか、改装工事や改装後の新規開店に向けた準備等の業務に従事していたこと

を踏まえ、労働者の脳内出血は、業務により、その自然経過を超えて著しく増悪して発症したものと認められるとして、過労と脳内出血との因果関係を認めました。

また、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であるところ、被告は、漫然と、上記のとおりの業務に原告を従事させ、時間外労働をさせており、原告の心身の健康を損なうことがないよう措置を講じるなど被告が上記義務を尽くしていたといえる事情はないから、被告は上記義務に違反していると認められる。」として使用者の安全配慮義務違反も認めています。

労働者は163/112の高血圧でした。

使用者側は、労働者が高血圧なのに通院もしないで、飲酒をしていたことから、過失相殺すべきと主張していました。

しかし、判決は、通院義務はないし、飲酒量も多くなかったとして、労働者の過失を認めませんでした。

ただし、高血圧により1割の素因減額をしています。

横浜地裁・東京高裁の事例より血圧が低いこと、通院をしていないのにしているとウソをつくような状況がなかったことから素因減額割合に差が出たものと思われます。

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