交通事故で亡くなった場合、受領できなくなった年金分は逸失利益となるか?

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 年金と逸失利益

交通事故で死亡した場合、年金が受給できなくなります。

そのため、年金分について逸失利益として損害賠償の対象となることがあります。

ただし、年金の種類によって賠償の対象とならないこともあります。

以下、解説します。

2 年金の種類と逸失利益

年金については基本的に受給権者が死亡した場合に逸失利益の賠償の対象となります。

しかし、障害年金の加給分、遺族厚生年金等の遺族年金については逸失利益の対象から除外する判例がありますので、注意が必要です。

最高裁平成12年11月14日判決は、以下のとおり述べ、遺族年金は逸失利益の対象とならないとしています。参照:遺族年金の逸失利益性を否定した判例

「専ら受給権者自身の生計の維持を目的とした給付という性格を有するものと解される。また、右年金は、受給権者自身が保険料を拠出しておらず、給付と保険料とのけん連性が間接的であるところからして、社会保障的性格の強い給付ということができる。加えて、右年金は、受給権者の婚姻、養子縁組など本人の意思により決定し得る事由により受給権が消滅するとされていて、その存続が必ずしも確実なものということもできない。これらの点にかんがみると、遺族厚生年金は、受給権者自身の生存中その生活を安定させる必要を考慮して支給するものであるから、【要旨】他人の不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろう右年金は、右不法行為による損害としての逸失利益には当たらないと解するのが相当である」

 

3 受給開始前、受給資格を満たさない年金と逸失利益

年金受給開始前に関し年金の逸失利益性を認めた裁判例

裁判例においては、受給開始前の年金についても逸失利益を認める事例があります。

大阪地裁平成27年11月17日判決は、「事故当時,Aは,国民年金と厚生年金を計298か月間納付してきていることが認められるところ,同加入期間が25年(300か月)にわずかに満たないことに鑑みれば,受給開始前ではあるものの,老齢基礎年金及び老齢厚生年金について,死亡逸失利益を本件事故による損害として認めるのが相当である。」として、年金についての逸失利益の賠償を認めました。ただし、就労中と想定される67歳までの間は認めませんでした。

大阪地裁判決等を踏まえると、年金の加入期間を満たす、あるいはもうすぐ満たすような年齢の被害者については、年金受給前においても年金の逸失利益性が認められる可能性が高いと考えます。

年金支給要件を満たすまで十数年を要する場合に年金の逸失利益性を否定した裁判例

他方、受給資格を満たすまでかなり年月を要するような場合には、年金の逸失利益が認められない可能性があります。

東京地裁平成13年2月22日判決は、以下のとおり述べ、年金受給資格を得るため十数年を要する場合において年金の逸失利益性を否定しました。

「退職共済年金の受給資格を取得するには組合員等としてなお十数年の期間を要する(地方公務員等共済組合法78条参照)。しかし,現在,年金制度の改革が進められており,年金額,支給開始年齢や保険料の額のみならず,果して,保険料の拠出を要件とする現行の社会保険方式が今後も維持されるのかどうかも明らかではなく,将来においても年金の逸失利益性が認められるのか否かは不確実というほかない。」
「そうすると,いまだ年金の受給資格を取得していない亡Aについては,将来受給すべき年金を逸失利益として認めることはでき」ない

このように、年金支給要件を満たすまで2ケ月の場合には年金の逸失利益性が認められ、10数年の場合には否定されており、その間にある、年金支給要件を満たすまで数年を要するという場合にどうなるかについては判然としないと言えます。

年金支給要件を満たすまで数年という場合には、とりあえず年金の逸失利益性を主張してみるべきでしょう。

4 年金と生活費控除

被害者死亡で逸失利益が賠償される場合、生活費がかからなくなる分を控除することになります。これを生活費控除といいます。

年金については、それが生活の最低保証に近いものであることから、生活費控除率が高くなる傾向があり、50%というケースが多くあります。

大阪地裁令和4年4月15日判決は、医療過誤についてですが、「本件患者は、老齢厚生・基礎年金を受給し、年額10万8800円(平成29年の源泉徴収票による。)の収入を得ていたことが認められる。また、年金支給の趣旨及びその金額等を踏まえれば、生活費控除率は50%とするのが相当である。」として年金受給についての生活費控除率を50%としました。

東京地裁令和4年1月28日判決は、「亡Cの年金収入分の基礎収入としては,35万1814円とするのが相当である。また,生活費控除率は50%とし」とし、生活費控除率を50%としました。

大阪地裁令和3年9月14日判決は、「亡Aの年金額,生活状況等を踏まえれば,亡Aの年金に係る基礎収入は110万8722円,生活費控除率は50%と認めるのが相当である」とし、生活費控除率を50%としました。

大阪地裁令和3年9月9日判決は、「Aは,年金として年額179万3587円を受給していた・・・上記年金受給額に照らして,生活費控除率は,50%を認めるのが相当である。」とし、生活費控除率を50%としました。

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