執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 むちうちで後遺障害12級の場合の逸失利益
後遺障害がある場合の逸失利益は、後遺障害により労働能力が損なわれた状態が続くことによる損害です。
後遺障害というのは、もう治らないという意味を含んでいるので、原則として就労可能年数(通常は67歳まで)労働能力が損なわれたものとして逸失利益の計算をします。
ところが、むちうちの場合、裁判所は14級なら5年、12級なら10年についてのみ労働能力が喪失したものとして扱っています。
むち打ち以外でも12級の場合に10年しか労働能力の喪失を認めない裁判例も少なくありません。参照:12級のめまいで労働能力喪失期間を10年間とした裁判例
そのため、保険会社は、むちうち以外の14級、12級事案でも、労働能力喪失期間を5年や10年に限定することがあります。
しかし、裁判所は、必ずしも、むちうち以外の14級、12級事案において、労働能力喪失期間を5年や10年に限定するわけではありません。
以下、裁判所が、むちうち以外の12級の後遺障害事案で、10年を超える労働能力喪失期間を認定した事例についてみていきます。
2 むちうち以外の12級事案における労働能力喪失期間
裁判の時点までに長期間後遺障害の症状が継続していた場合
裁判の時点において、長時間後遺障害が軽快しないまま継続していた場合、将来も長期間同様の状態が続くと推定され、労働能力喪失期間が長くなることがあります。
東京高裁平成14年9月25日は、局部に頑固な神経症状を残すとして12級の後遺障害に認定されたケースについて、以下のとおり、41年間の労働能力を認めています。
「事故後6年以上も経過した時点においても残存していることからすると,この後遺障害が近い将来消失するものと認めるのは相当ではない。」
後遺障害の内容自体から軽快が想定できない場合
性質上不可逆的な損傷による後遺障害については労働能力喪失期間が限定されない傾向があります。
大阪地裁平成11年2月23日判決は、脊髄損傷に基づく後遺障害の事例について29年間の労働能力喪失を認めています。
骨折等の後に残った後遺障害
骨折、脳挫傷等重大な傷害について生じた後遺障害については労働能力喪失期間が長くなる傾向があります。
以上のとおり、12級の後遺障害だから自動的に労働能力喪失期間が10年に限定されるわけではないことに注意が必要です。
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