中間利息控除はどの時点を基準に行うのか?(交通事故)

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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目次

1 交通事故と中間利息控除

2 中間利息控除はどの時点を基準に行うか?

3 将来介護費の中間利息控除

4 中間利息控除についての事故時説

5 新潟で交通事故のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)へ

 

1 交通事故と中間利息控除

交通事故で損害が発生した場合、被害者は加害者に賠償請求をなしえます。

この賠償請求は事故時からすることができます。

ところが、介護費用や逸失利益は事故後長い期間にわたり発生します。

それら本来将来に払われる損害について、それより前の時点で支払われることにより、加害者が利息分損をし、被害者が得をします。

それを調整するのが中間利息控除であり、年3%の計算で行います。

2 中間利息控除はどの時点を基準に行うか?

この中間利息控除については、損害額を低くするものです。

ですから基準時が前になればなるほど被害者には不利になります。

中間利息控除の基準時については、

ⅰ 事故時

ⅱ 症状固定時

ⅲ 紛争解決時

の3つがありえます。

実務の趨勢上は症状固定時を基準として中間利息控除をしています。特に逸失利益についてはその傾向が顕著です。

例えば、大阪地裁令和2年3月30日判決は、以下のとおり述べ、症状固定時をもって中間利息控除の基準日としています。

被告は,中間利息控除の基準日は不法行為日に求めるべきであり,不法行為日から労働能力喪失期間の終期までの係数から不法行為日から症状固定日までの係数を控除した数値をもって中間利息を控除すべきである旨主張する。しかし,中間利息控除と遅延損害金の発生との間は厳密な論理的関連性はないこと,治療費等の積極損害については中間利息控除が行われていないことと均衡を失すること,逸失利益の額は,裁判所において諸般の事情を考慮して合理的な金額を定めれば足りると解されており,事故日から症状固定日までの中間利息控除を諸般の事情の一つとして考慮して逸失利益の額を定めれば足りると考えられることなどの点に照らすと,中間利息控除基準時を症状固定日とすることが不合理とはいえないから,被告の主張は採用することができない。

その他、大阪地裁平成30年10月30日判決、神戸地裁伊丹支部平成30年11月27日判決も、事故時説が主張された案件において、症状固定時を基準としています。

3 将来介護費の中間利息控除

しかし、介護費用については、被害者にとって有利な紛争解決時を基準とした裁判例も決して少なくはありません。

京都地裁平成15年10月31日判決は、逸失利益については症状固定時を基準に中間利息控除をしつつ、介護費用については症状固定時ではなく(おそらく)口頭弁論以降についてのみ中間利息控除をしています。

ですから、少なくとも将来介護費については、中間利息控除の基準日を口頭弁論終結時として請求すべきでしょう。

4 中間利息控除についての事故時説

事故時説は多数とは言えませんが、いくつかの裁判例があります。

事故時説に立つものとして、富山地裁高岡支部平成15年3月31日判決は、「不法行為に基づく損害賠償の遅延損害金の起算日は当該不法行為の日であるとされ、原告らも本件事故の日である平成一一年一月五日からの遅延損害金を求めているのであるから、中間利息を控除して現価を計算するにあたっても本件事故の日を基準とし、それ以降の利息を控除すべきである」として、事故時説に立つ理由を説明しています。

この事故時説については、後遺障害に基づく損害が症状固定時において現実化するという実態を無視したものであり、到底取り得ないものと思われます。

このような主張が加害者側から出てきた場合には徹底的に批判をしていくべきでしょう。

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