不祥事についての調査などによる自殺と労災

新潟地裁平成22年8月26日判決は、以下に述べるとおり、不祥事についての調査により労働者が過重な負荷を受けたとして、労働者が重度ストレス反応により自殺した件について、自殺の業務起因性を認めています。

裁判所はまず、不祥事について、心理的負荷Ⅱに該当するとしました。

「前記認定事実によれば,亡A1の借名契約の大半はもともと業務の一環として行われていたものの,その後,共済規程や法律の改正により不祥事に該当するとされ,その責任が問題になったものであり,このような状況は,「会社で起きた事件について,責任を問われた」に該当し,その心理的負荷の強度は「Ⅱ」であると解するのが相当である。」

同判決は、その上で、不祥事に関する調査が労働者に過大な負荷を与えたとし、心理的負荷がⅢになるとしました。

「Ⅰ 前記認定事実によれば,亡A1が行った借名契約は,いずれもJA佐渡が借名契約が違法になったことを周知した時期(平成16年3月)以前に締結されたもので,全て契約の当事者となった者の同意を得たものであって,業務上横領等の犯罪行為に該当しないことはもちろん,事案として軽微なもので,亡A1の責任の程度は低いものであった。」
「Ⅱ しかるに,亡A1は,平成18年8月28日,マラソンに参加するため休暇中で北海道という遠方にいたにもかかわらず,呼び出された上,同日午後6時ころから午後9時ころまでの間3時間にわたり,JA佐渡理事長を含む亡A1の上司10名が同席する状況下で質疑が行われ,その後引き続き上司が同席する中で解約手続が行われた。
上記手続は,亡A1の行為を私文書偽造になる可能性があると言い,亡A1の休暇中の予定について確認して「こういう状態のときに,か。」と言うなど,相当に糾問的に行われ,上記手続終了後,亡A1はI1支店長に対し,「死ぬしかない。」と言い,I1支店長は亡A1に対し,「何ばかなことを言うな。」,「気を落とさんように」と言い,さらに,亡A1が同月30日欠勤した際,B1理事長初め上記手続に同席した上司らがいずれも亡A1の自殺を想記する程度に,亡A1に過大な心理的負荷を与えるものであった。」
「Ⅲ 又,同月28日,JA佐渡が全職員に配布し,同月29日亡A1が目にした文書は亡A1の行為について時期,契約件数,保障額,掛金及び動機を具体的に記載した上,直ちにJA新潟中央会等の上部組織に報告し対策本部を立ち上げると共に同種事案がないかを中心に全店調査に入ることを決定し,マスコミへも公表したとするものであり,かつ,「『架空の契約であろうが借名契約であろうが契約実績さえあがればよい』というようなゆがんだ考えは断じて許すことができません」,「法律や規則よりも前に,まず人として,やっていいことといけないことの区別くらいはできるはずです」と述べ,当該行為者の考え及び当該行為者を口を極めて非難するものであり,亡A1に過大な心理的負荷を与えるものであった。」
「Ⅳ 以上の事情を併せて考えれば,亡A1の心理的負荷の強度は,「Ⅱ」から「Ⅲ」に修正することが相当である。」

 

このように、不祥事に対する調査などが行き過ぎたものとなった場合には、精神的疾患り患とが労災として認められることもありえます。

労災、労働災害、過労死、過労自殺でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

 

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