遺産分割について(遺産分割の基準、手続き、特別受益、寄与分について)

相続問題

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 遺産分割の仕方

目次

誰が相続人となるか?

遺産分割の基準

遺産分割の手続き

特別受益

寄与分

 

誰が相続人となるか?

遺産分割は相続人の間でなされますが、誰が相続人となるかは民法で定められています。

相続人の配偶者は常に相続人となります(民法890条)。

その他、被相続人の子⇒被相続人の尊属(親等)⇒被相続人の兄弟姉妹の順で相続人となります(民法889条)。

相続人となるべき者(子、兄弟姉妹)が被相続人より先に中うなった場合、相続人となるべき者の子が相続人となります(民法887条、民法889条)。これを代襲相続といいます。

被相続人の直系卑属ではない者は代襲相続人とはなりえません。

被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は、被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることができないとされます(最高裁令和6年11月12日判決)。参照:代襲相続についての判例

被相続人を故意に殺したり、被相続人が故意に殺されたことを知って告訴等しなかった者、詐欺や強迫によって遺言をさせるなどした者、遺言書を偽造等した者は欠格事由がある者として相続人としての資格を有しません(民法891条)。

被相続人に虐待や重大な侮辱を与えた者、その他著しい非行があった者については、被相続人の請求により相続人から廃除されることがありえます(民法892条)。

遺産分割の基準

被相続人が残した遺産の分割(遺産分割)は、遺言書があればそれに従うことになります。

遺言書があっても侵すことができない相続人の遺留分がある場合もあり、遺言により遺留分が侵害される場合には遺言書の効力が制限されることになります。

遺言書がない場合、まずは当事者間の話し合いで決めることになります。その際、法律の定める法定相続分が基準となりますが、必ずしもそれに拘束される必要はありません。

なお、法定相続分は、以下のとおりです。

子と配偶者が相続人⇒子は2分1 配偶者2分の1

配偶者と親が相続人⇒配偶者3分の2、親3分の1

配偶者と兄弟姉妹が相続人⇒配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1

遺産分割の手続き

話し合いがまとまらない場合、遺産分割調停をすることになりますが、そこでも話し合いがまとまらない場合、審判手続きで裁判所が決めることになります。

遺産分割の調停や審判は、相続人全員が当事者となります。

つまり、申立人以外の相続人は相手方としなければなりません。

相続分の譲渡をしてもらい、それを証する書面を裁判所に提出することで、譲渡をした相続人を除外して調停等を行うことは可能です。

調停は相手方の誰かの住所地の家庭裁判所に申し立てることになります。

なお、稀ですが、遺産分割の保全処分が行われることもあります。

東京高裁令和3年4月15日決定は、「遺産分割の審判を本案とする審判前の保全処分は,同保全処分が本案の係属を要し,本案と密接に関連しているという,民事保全と異なる面を持つ特殊な保全処分であることから,その被保全権利(すなわち,抗告人の債権者代位の対象となっている相手方〔債権者代位権の被保全権利である金銭債権の債務者〕の有する権利)は,既存の権利ではなく,本案の終局審判で形成される具体的権利となる。したがって,審判前の保全処分においては,本案の終局審判で形成される具体的権利が認められる蓋然性,すなわち本案認容の蓋然性および保全の必要性を要し,この本案認容の蓋然性は,保全処分の対象である権利関係が,本案手続において具体的に形成される見込みがあることと解される。」としています。

つまり審判で認められるであろう権利について証拠で明らかにする必要があるという点について注意が必要です。

特別受益

裁判所では、法定相続分を基礎に、相続人が被相続人から特別に利益を得ていた特別受益、相続人が被相続人の財産形成に特別に寄与をした寄与分などによる調整を行い、遺産分割を行うことになります。

特別受益は、被相続人から生前に贈与等を受けていた相続人がいる場合に、その受けていた金額について遺産に計算上戻し、それをもとに法定相続分で遺産額を割り各相続人の取り分を計算する(贈与等を受けていた相続人についてはその分を引く)というものです(民法903条)。

遺産が800万、相続人は子どもであるAさんとBさん、相続人Aさんは生前に被相続人から200万もらっていたというケースでは、800万+200万=1000万を2で割り、Bさんは500万円分取得、Aさんは500万-200万=300万取得するということになります。

被相続人Aさんが死亡し、Bさんが遺産を相続し(第1次相続)、その後Aさんの遺産について協議がまとまらない間にBさんが死亡し、Bさんの遺産の相続手続き(第2次相続)が開始した場合、Bさんの相続人Cさんに特別受益がある場合、Bさんが相続したAさんの遺産について、Cさんは特別受益分を持ち戻す必要があります。参照:特別受益についての判例

保険の受取人として受け取ったお金は原則として特別受益にはなりませんが、特に不公平である場合には特別受益として扱われることがあります。参照:保険金と特別受益についての判例

なお、改正後の民法第九百四条の三は、以下のとおり定めます。

「前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。」

この前3条には特別受益の規定も含まれます。

ですから、被相続人が亡くなってから10年経過すると特別受益の主張をすることができなくなります。

特別受益の主張をしたい方は、早めに遺産分割の手続きをする必要があるのです。

寄与分

寄与分は、被相続人の財産の形成に寄与した相続人がいた場合、その寄与分について相続財産から引き、残りを全相続人で法定相続分に従い分割し、寄与した相続人はそれに寄与分を取得できるというものです。

寄与としては、被相続人の事業に関する労務の提供、被相続人の事業に資金を提供する、被相続人の療養看護などがあります(潮見佳男編集「新注釈民法19 第2版」(339頁以下))。

このような寄与は原則無償で、かつ、義務の履行を超えた特別なものでなければならないとされます(潮見佳男編集「新注釈民法19 第2版」(343頁以下))。

遺産が1000万、相続人は子どもであるAさんとBさん、相続人Aさんが生前に200万円分の寄与をしていたというケースでは、1000万ー200万=800万を2分の1の400万ずつ取得、Aさんはさらに200万もらうので200万+400万=600万を取得することになります。

この寄与については、相続人の配偶者による寄与も寄与に含まれると解釈されてきました(潮見佳男編集「新注釈民法19 第2版」(338~339頁)。

なお、相続開始から10年以内に遺産分割の手続きをしないと寄与分の請求ができないのは特別受益と同じです。

寄与分の主張をしたい人は、早めに遺産分割の手続きをしましょう。

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