主婦・主夫と休業損害(交通事故) 新潟県の交通事故はご相談ください

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 主婦・主婦と休業損害(交通事故)

専業主婦・主夫の休業損害

交通事故で仕事ができなくなった場合、減収分に応じた休業損害が賠償の対象となりえます。

給与所得者であれば、給料が減少した分が休業損害額となります。

専業主婦の場合、実際に収入が下がるということはありません。

しかし、価値のある労働をしているわけですから、主婦としての仕事ができなくなった日数に応じて、女性労働者の平均賃金に応じた休業損害が賠償されることになります。

専業主婦・主夫については、給料という対価がありませんので、給料によってではなく、労働をなしえたかどうか、どの程度なしえたかどうかにより休業損害が発生するかどうか、いくら発生するかが決まってきます。

そのため、症状の状況に応じて、平均賃金の一定割合について休業損害が認められるということがあります。

さらに、症状の推移に応じて、時期によってその割合が異なってくるということもあります。

高齢の主婦・主夫

高齢の主婦の場合、女性労働者の平均収入の一定割合が基準とされます。

例えば、東京地裁令和4年1月28日判決(医療過誤についての判決です)は、以下のとおり述べ、80歳の専業主婦について、女性の平均年収の7割を基準に休業損害を算定しました。

当時80歳であり,原告X1と二人暮らしで家事労働に従事していたことが認められる。また,亡Cの生活状況や年齢に鑑みると,亡Cの基礎収入としては,賃金センサス平成25年第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の年収353万9300円の70%とするのが相当である。

また、被害者の年齢層の平均年収をもとに休業損害を算定する例もあります。

京都地裁令和3年11月9日判決は、67歳の主婦について、以下のとおり述べ、65歳から69歳女性の平均賃金をもとに休業損害を算定しています。

Aの基礎収入については,293万9200円(平成28年,学歴計・女性65歳から69歳平均賃金)の限度でこれを認めるのが相当である。

高松高裁平成17年5月17日判決は、70歳の家事従事者の収入について65歳以上の賃金センサスをもとに算定するのが相当としています。参照:高齢主婦の休業損害についての判決

兼業の主婦・主夫の休業損害

兼業の主婦・主夫の休業損害の基本的計算方法

他に仕事を持っている主婦の場合、女性労働者の平均賃金と他の仕事で得られる収入とを比較し、女性労働者の平均賃金の方が多ければ、女性労働者の平均賃金をもとに休業損害が計算されます。

例えば、大阪地裁平成30年6月28日判決は、以下のとおり述べて、保険外交員としての収入より女性労働者の平均賃金の方が多いとして、女性労働者の平均賃金をもとに休業損害を計算しています。

原告X1は,保険外交員として稼働するかたわら,主婦として家事労働を行っていたものである。そして,本件事故当時の原告X1の年収は,平成25年賃金センサス女性労働者・全学歴・全年齢における年収よりも低いと認められるから,同賃金センサスの年収353万9300円(日額9697円)を基礎収入とする。

民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2025(令和7年)所収の講演録「兼業家事従事者の休業損害について」(大野眞穂子裁判官)も同様の理解に立っています。

なお、就労実態と家事分担状況を総合考慮し、専業家事従事者よりも稼働能力が高いとして、賃金センサスの全年齢平均ではなく、年齢別の賃金センサスで評価される場合もあります(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2025(令和7年)所収の講演録「兼業家事従事者の休業損害について」(大野眞穂子裁判官))。

給料が発生したことは兼業主婦・主夫の休業損害にどのような影響を与えるか?

兼業主婦が交通事故で負傷した場合、仕事はきちんと出て給料はもらうものの、家事に支障が生ずることもありえます。

その場合には、休業期間で調整するなどすることになります。

例えば、東京地裁平成30年1月10日判決は、以下のとおり述べ、交通事故による負傷のため家事には支障があったものの、会社員としては休業していない場合において、休業期間を短く認定することで調整をしていると考えられます。

原告X2は,会社員として稼働する傍ら,いわゆる兼業主婦として原告X1のための家事に従事していたところ,本件事故による頚椎捻挫(外傷性頚部症候群)及び腰部挫傷を受傷したことによって,かかる家事に支障を来したことが認められる。
もっとも,前掲証拠から認められる原告X2の受傷部位・内容,治療経過等に加え,原告X2が上記会社員としては休業していないことに照らせば,休業損害は,日額1万0211円に,実通院日数64日を乗じた65万3504円(日額1万0211円×64日)と認めるのが相当である。

会社から給料をもらっていれば、その分を休業損害額から引くこともありえますが、一般にはそのような扱いはされていないようです。これは、主婦・主夫の休業損害が賃金センサスを基本に計算されており、それにもかかわらず給料を丸々引くのは整合性がないからだと考えられます(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2025(令和7年)所収の講演録「兼業家事従事者の休業損害について」(大野眞穂子裁判官)も同趣旨)。

なお、賃金センサスより相当程度高い給料をもらっている専業主婦・主夫については、特に家事を多く分担していることは多くなく、よって給料が減少していない場合には休業損害を認めにくいとの指摘があります(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2025(令和7年)所収の講演録「兼業家事従事者の休業損害について」(大野眞穂子裁判官))。

家事を家族でシェアしている場合の兼業主婦・主夫の休業損害

家事を家族でシェアしており、みなが各自の家事を分担しているにとどまる場合、賃金センサスによる休業損害の計算はなされません(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2025(令和7年)所収の講演録「兼業家事従事者の休業損害について」(大野眞穂子裁判官))。そもそもこのような場合には、専業主婦・主夫という表現自体不適当とも言えるでしょう。

そこまで行かないにしても、被害者である兼業主婦・主夫の家事分担が限定的である場合には、賃金センサスの数値の一定割合を基準にして休業損害が計算されます(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2025(令和7年)所収の講演録「兼業家事従事者の休業損害について」(大野眞穂子裁判官))。

その割合を考える場合には、未成熟子の有無・人数、健康状態、介護を必要とする者の有無などが考慮されます(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2025(令和7年)所収の講演録「兼業家事従事者の休業損害について」(大野眞穂子裁判官))。

これは、未成熟子等がいる場合、家族が自分の事をするだけでは足りず、特定の家族が家事を多く負担しがちになるためだと考えられます。

家事代行サービスの利用と休業損害

家事をなしえないがために家事代行サービスを利用した場合、必要性・相当性のある範囲内で家事代行サービス費用が賠償対象となりえます。しかし、休業損害とは二重計上はできず、例えばベビーシッター代が認められた日数については休業損害の日数から引かれるなどして調整がされます(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2025(令和7年)所収の講演録「兼業家事従事者の休業損害について」(大野眞穂子裁判官))

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