どのような経歴詐称による解雇が無効となるのか? 解雇は新潟県の弁護士に御相談ください

労災、解雇問題
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第1 経歴詐称と解雇

経歴詐称が解雇理由とまではならないとした裁判例

しかし、労働契約法16条は合理的理由・社会的相当性のない解雇は無効だとしており、経歴詐称が不利益処分の理由となるについては、ある程度重大な経歴詐称がなければなりません。

参考:解雇には合理的理由・社会的相当性が必要だとする労働契約法

労働者が、ボランティアでコーチをしていたのに雇用されていたかの履歴書を提出したことが解雇理由になるか問われた事件についてのさいたま地裁平成29年4月6日判決は、以下のとおり述べ、それが重大な経歴詐称ではないとして解雇理由となることを否定しました。

原告がその履歴書において,客観的には一部事実と異なる経歴を記載していたにせよ,それが意図的な虚偽記載であったと認めるには足りないし,原告が「コーチとして勤務」したと記述した期間も最大2か月余りという短期間のもので,その記述が,原告の採否を決定するための重大な要素となったと認めることも困難であることを考えると,かかる虚偽供述が,当事者間の今後の雇用契約の継続を不可能とする程に被告との信頼関係を破壊するに足る,重大な経歴詐称であると認めることはできない。

この判断は東京高裁平成29年10月18日判決でも維持されています。

経歴詐称で解雇を認めた裁判例

東京地裁令和5年7月28日判決は、試用契約に関するものですが、経歴詐称が解雇理由となるとしました(実際には他の理由も含めて解雇が正当化されています)。

同判決は、

・職務経歴書に令和2年12月からSE業務を担当していた旨記載していたところ、同月4日から令和3年3月まで精神疾患(適応障害ないし不安障害)により休職しており、その間、SE業務を行っていなかったこと

・職務経歴書の記載は、原告がSE業務を行っていたとする内容であり、原告が面接時にもこれに沿う説明をしたこと

との事実を踏まえ、「原告が本件業務を行っていることが採用面接時の原告の稼働状況である上、被告が原告採用時に原告が現にSEの業務を行っていることを重視していたことからすれば、原告が本件業務を行っている旨の故意に事実に反する説明をした行為は、本件就業規則23条(6)「試用期間中の者で職員として不適格と認めたとき」に該当すると認められる。」として解雇を有効としました。

同判決は、試用についての判決で、しかも他の解雇理由もある事案ですから、安易に一般化はできないと思われます。

それでも経歴詐称での解雇は、かなり悪質な事案に限られることがわかると思います。

工場長要員が大学を卒業していないのに、早稲田大学政経学部卒業と履歴書に書くなど、履歴書に多数の虚偽があった事例で、そのことを他の理由とあわせて解雇の理由とできるとした裁判例としては山形地裁米沢支部昭和52年2月18日決定があります。参照:経歴詐称等の理由で解雇を有効とした裁判例

学歴と低く偽った場合と懲戒事由

裁判例上、重要な経歴の詐称は、労働者に対する評価を誤らせる結果、労働力の配置などに支障を及ぼしかねないことなどを理由に懲戒事由とされてきています。東京地裁昭和55年2月15日決定は、高い学歴を低く偽った場合にも懲戒事由となるとしています。

同決定は、オペレーター従業員について従業員の定着性等の観点から会社が従業員を高卒以下の学歴の者に限定し、例外を設けていなかったという前提において、

 「企業秩序を維持するために、大学もしくは短期大学卒業者をオペレーターとして採用しないことには十分な合理性が認められる。申請人の学歴詐称は前記のとおり、極めて意図的なものであって、背信性が強く、被申請人は申請人のかような学歴詐称による所沢工場への入社により、前記のような従業員構成、人事管理体制を混乱せしめられたものであり、被申請人と申請人との信頼関係は、申請人の経歴詐称の発覚により、ほぼ完全に破壊されたものと考えられる。」

として、経歴詐称による懲戒処分を認めました。

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