経歴詐称と解雇

労災、解雇問題

1 経歴詐称と解雇

裁判例上、重要な経歴の詐称は、労働者に対する評価を誤らせる結果、労働力の配置などに支障を及ぼしかねないことなどを理由に懲戒事由とされてきています。東京地裁昭和55年2月15日決定は、高い学歴を低く偽った場合にも懲戒事由となるとしています。

同決定は以下のように言います。

  被申請人は所沢工場におけるオペレーター従業員に関しては、その作業の特質、従業員の定着性等の考慮から、その採用条件を高卒以下の学歴の者に限り、この方針を厳守していたものであるが、申請人は、公共職業安定所における被申請人の公開用求人カードの記載、被申請人所沢工場の牧野係長への電話から、被申請人の右採用条件を知りながら、敢えて、オペレーターとして被申請人と雇用関係を締結するために、短期大学卒業という真実の学歴を秘匿したものであり、被申請人としても、事前に申請人の真実の学歴を知っていたとすれば、申請人と労働契約を締結しなかったであろうと推測される。これを客観的にみても、被申請人は、所沢工場の従業員(オペレーターに限らず)を高卒以下の学歴の者のみで構成しており、右学歴の等質性を前提として、右工場の職制、人事管理体制を組織していたのであり、未だこの方針に例外を設けたことはない(本社派遣の特殊研究に携わる技術者は別として)のであるから、右企業秩序を維持するために、大学もしくは短期大学卒業者をオペレーターとして採用しないことには十分な合理性が認められる。申請人の学歴詐称は前記のとおり、極めて意図的なものであって、背信性が強く、被申請人は申請人のかような学歴詐称による所沢工場への入社により、前記のような従業員構成、人事管理体制を混乱せしめられたものであり、被申請人と申請人との信頼関係は、申請人の経歴詐称の発覚により、ほぼ完全に破壊されたものと考えられる。

しかし、経歴詐称が不利益処分の理由となるについては、ある程度重大な経歴詐称がなければなりません。

労働者が、ボランティアでコーチをしていたのに雇用されていたかの履歴書を提出したことが解雇理由になるか問われた事件についてのさいたま地裁平成29年4月6日判決は、以下のとおり述べ、それが重大な経歴詐称ではないとして解雇理由となることを否定しました。

原告がその履歴書において,客観的には一部事実と異なる経歴を記載していたにせよ,それが意図的な虚偽記載であったと認めるには足りないし,原告が「コーチとして勤務」したと記述した期間も最大2か月余りという短期間のもので,その記述が,原告の採否を決定するための重大な要素となったと認めることも困難であることを考えると,かかる虚偽供述が,当事者間の今後の雇用契約の継続を不可能とする程に被告との信頼関係を破壊するに足る,重大な経歴詐称であると認めることはできない。

この判断は東京高裁平成29年10月18日判決でも維持されています。

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