海外出張と過労(労災)

交通事故

労災保険において、過労を原因として脳・心臓血管疾患が発症した、あるいは精神疾患が発症したと言えるためには、強度の負荷がかかったといえる必要があります。

そして、海外出張は、時差による負荷、慣れない業務による負荷という要素があるため、強度の負荷を裏付ける事情となります。

この点、ベトナムに長期出張していた労働者が過労自殺した件についての平成30年6月13日判決は、以下のとおり述べて、海外出張は強度の負荷を与えるものとはならないとしました。

 

「亡Bは,本件発病の約3か月前である平成23年6月15日,本件会社大阪支社からC東京本社に出向して単身赴任し,引き続き,3回にわたりベトナムに長期出張しているところ,原告は,これらの一連の出来事が亡Bに強い心理的負荷を与え,本件疾病の原因となった旨主張する。」

「以上認定した事実によれば,C東京本社への出向及び本件ベトナム出張自体は,亡B自身が強く希望して実現されたものであり,その業務内容も,亡Bの従前の経験に合致したものであって,英語の点を含めて特段の困難性を有する業務はなかったと認められ,これらの点に,Cベトナムの支援体制(全行程への駐在員の同行又は同席等。上記認定事実(3)イ(エ)),出張期間等の点(長期間継続的な滞在を前提とする海外駐在とは大きく異なるものであること)をも併せ鑑みると,転勤により職務及び生活環境に変化が生じ,それが海外での勤務を伴うものであるという点を踏まえたとしても,C東京本社への出向及び本件ベトナム出張について,客観的にみて,本件疾病を発病させる程度に強度な心理的負荷であったとは認められない。」

このように、新規性のある業務ではなかったこと、支援態勢が充実していたこと、自ら望んだ海外出張であったことを踏まえ、負荷が強いとは言えないとしました。

負荷自体は総合的に判断するものであり、結論の妥当性については何とも言えませんが、海外出張を本人が希望していたということを取り上げることには違和感は禁じ得ません。

出張を希望した以上、途中でもう行きたくないと言えない場合もあるでしょうし、希望していたかどうかという事情はあまり重視されるべき要素ではないと思います。

それでも、裁判所が現にそのような判断をする以上、労災の関係で海外出張の負荷を主張する場合には、出張するに至った経過、サポート体制、従来の業務との断絶などを主張立証すべきことになります。

過労死、過労自殺、労災などでお悩みの方は、当さいとうゆたか法律事務所の弁護士(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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