過重労働と喘息の重積発作(労災)

さいとうゆたか弁護士

1 労災としての喘息

子どもにおいてはアレルギーが主原因となって発症などする喘息ですが、大人についてはストレスが原因で発症したり悪化したりすると言われています。

そこで、過重労働により喘息が悪化した場合において労災が認められた事例もあります。

例えば、札幌高裁平成21年1月30日判決は、以下のとおり述べて、気管支喘息の基礎疾患を有していた労働者が加重労働により喘息の重積発作を起こし、死亡した件について、労災と認定しました。

同判決は、まずは以下のとおり述べ、一般論として過労と喘息発症・悪化との間に因果関係がありうることを述べます。

「ストレス及び過労が,喘息症状ないし発作に対する増悪因子となること,さらには,喘息死の誘因となることは,それがいかにして喘息症状を増悪させ,又は死に至るまでにその症状を悪化させるかについての厳密な機序やその客観的・定量的な相関関係が医学的に明らかになっているとまではいえないものの,臨床的には裏付けられた見解であって,医学上も十分に合理的な関連性が肯定されていると評価することができる。」

その上で、労働者について喘息症状発症前において以下の時間外労働時間を認定します。

平成13年4月23日~5月22日  22時間
5月23日~6月21日  45時間50分
6月22日~7月21日  49時間20分
7月22日~8月20日  67時間
8月21日~9月19日  72時間
9月20日~10月19日 92時間20分

 

そして、以下のとおり、過重労働前には軽症だった喘息が、過重労働後には重積発作を生じるレベルになったとして、最終的には過重労働を原因として喘息が悪化したとして労災認定をしました。

 「平成13年9月16日の発作以前の段階において,太郎の基礎疾患である気管支喘息の症状は,なお軽症の段階にとどまっていたというべきであり,自然的経過によりわずかな誘因でも重積発作をもたらすほど重症化していたとは認められない。」
「これに対して,平成13年9月16日に太郎が発作を起こしてJ内科医院を受診した後は,①その発作が中等度であったこと,②その後継続診療は行われていないが,当日の診療医は救急担当医であったこと,③結果的にその約1か月後に重積発作である本件喘息発作を起こしていること,④太郎の同僚が,同年10月13日には,太郎の喘鳴を聴いており,同月19日の本件喘息発作発症日の日中には,その喘鳴がさらにひどくなり太郎が肩で息をしているのを目撃していること,⑤佐藤医師も,同年9月16日の診療以降の太郎の症状は,その程度を中等度以上と評価するか否かはともかく,不良・不安定な状態が続き,適切な治療管理は必要な状態ではなかったかと考えていること(〈人証略〉),⑥西村医師も,原審において,同日以降の太郎の症状については中等度以上と評価できると断定していること(〈人証略〉)から総合的に判断して,太郎の症状は,長期管理が必要な前記ステップ3の中等症持続型に該当すると評価すべきである。」

喘息については過重労働以外の原因が想定されるため、労災認定は簡単ではないと考えられますが、過重労働や症状の悪化がきちんと立証されれば労災認定されることもありうるということです。

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