1 初めに
近年、労働力不足などを背景に、高齢の労働者活用が様々な職場で進んでいます。
しかし、高齢者については、身体能力などの衰えにより、労災などの事故も発生しやすくなっています。
そのため、一般の労働者に比べ、特別な配慮を要する場合もあり、そのような場合に特別な配慮をしなかった結果労災事故が発生したのであれば、事業者に損害賠償責任が生ずる場合もあります。
以下、説明します。
2 「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」
厚生労働省は、令和2年3月16日、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を発出しました。
事業主が同ガイドラインを遵守しなかった結果、労災事故が発生した場合、その不順守は安全配慮義務違反の判断において重視されるものと思われます。
具体的には、同ガイドラインに基づき、
・健康状況や体力が低下することに伴う高年齢者の特性や課題を想定し、リスクアセスメントを実施すること
・高年齢労働者の状況に応じ、フレイルやロコモティブシンドロームについても考慮すること
等が求められます。
より具体的には、
・視力や明暗の差への対応力が低下することを前提に、作業場の照度を確保する
・階段には手すりを設け、可能な限り段差を解消すること
・滑りやすい箇所には防滑素材を採用したり、労働者に防滑靴を着用させること
・危険個所について注意喚起を行うこと
・警報音等は高齢者等にも使用しやすい中低音を採用する、騒音の低減に努める
・高齢者の有効視野を考慮した警告等を採用すること
等の対策が検討されるべきです。
3 高齢者と過労死
脳・心臓血管疾患による過労死は高齢者にも発生しています。
しかしながら、高齢者については、一般的に労働時間がそれほど長くないことが多いため、労災保険の手続きで過労死認定されづらいと言われています。
この点、高齢者については、若年者より短い労働時間であってもより身体に負荷がかかりやすいと言えます。「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」においても、「勤務時間を工夫することで高年齢者が就労しやすくすること(短時間勤務、隔日勤務、交代制勤務」とされているところです。
労災保険の認定や安全配慮義務違反による損害賠償請求について、高齢者について、特に形式的な労働時間の基準にこだわらない、柔軟な対応が求められます。
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当職が担当したANAクラウンプラザホテル新潟過労労災事件についての記事
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