執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 高齢者の労災について考慮すべき事項
近年、労働力不足などを背景に、高齢の労働者活用が様々な職場で進んでいます。
しかし、高齢者については、身体能力などの衰えにより、労災などの事故も発生しやすくなっています。
令和7年5月8日に可決成立し、令和8年4月1日に施行された改正労働安全衛生法第六十二条の二でも、「事業者は、高年齢者の労働災害の防止を図るため、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。」としています。参照:
改正労働安全衛生法
そのため、一般の労働者に比べ、特別な配慮を要する場合もあり、そのような場合に特別な配慮をしなかった結果労災事故が発生したのであれば、事業者に損害賠償責任が生ずる場合もあります。
以下、説明します。
2 「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」
厚生労働省は、令和2年3月16日、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を発出しました。
事業主が同ガイドラインを遵守しなかった結果、労災事故が発生した場合、その不順守は安全配慮義務違反の判断において重視されるものと思われます。
具体的には、同ガイドラインに基づき、
・健康状況や体力が低下することに伴う高年齢者の特性や課題を想定し、リスクアセスメントを実施すること
・高年齢労働者の状況に応じ、フレイルやロコモティブシンドロームについても考慮すること
等が求められます。
より具体的には、
・視力や明暗の差への対応力が低下することを前提に、作業場の照度を確保する
・階段には手すりを設け、可能な限り段差を解消すること
・滑りやすい箇所には防滑素材を採用したり、労働者に防滑靴を着用させること
・危険個所について注意喚起を行うこと
・警報音等は高齢者等にも使用しやすい中低音を採用する、騒音の低減に努める
・高齢者の有効視野を考慮した警告等を採用すること
等の対策が検討されるべきです。
3 高齢者の労災についての裁判例
横浜地裁平成15年5月13日判決は、以下のとおり述べて、プレスブレーキによる作業を高齢者にさせたこと自体を安全配慮義務違反としました。
「本件プレスブレーキによる作業は、作業内容等の客観的事情と原告の年齢、職歴等の主観的事情とを対比検討した場合、社会通念上
高齢者である原告の健康を害する危険性が高いと認められる作業に当たるということができる。にもかかわらず、事業団は、本件プレスブレーキによる作業も含まれるものとして原告に対して上記工場内作業の仕事を提供し、原告がこれに応じて本件プレスブレーキによる作業に従事した結果、本件事故に至ったのであるから、事業団は、原告に対する健康保護義務の違背があったものとして、債務不履行に基づき、本件事故によって原告が被った損害を賠償すべき義務があるというべきである。」
このように、高齢であることから、そもそもある種の業務に従事させることが安全配慮義務違反となるという事態もありえます。
4 高齢者と過労死
脳・心臓血管疾患による過労死は高齢者にも発生しています。
しかしながら、高齢者については、一般的に労働時間がそれほど長くないことが多いため、労災保険の手続きで過労死認定されづらいと言われています。
この点、高齢者については、若年者より短い労働時間であってもより身体に負荷がかかりやすいと言えます。「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」においても、「勤務時間を工夫することで高年齢者が就労しやすくすること(短時間勤務、隔日勤務、交代制勤務」とされているところです。
労災保険の認定や安全配慮義務違反による損害賠償請求について、高齢者について、特に形式的な労働時間の基準にこだわらない、柔軟な対応が求められます。
なお、高齢者の過労死について判断した裁判例としては、東京地裁平成8年3月28日判決があります。
同判決は、「労働時間、休憩時間、休日、休憩場所等について適正な労働条件を確保し、さらに、健康診断を実施したうえ、労働者の健康に配慮し、年齢、健康状態等に応じて、労働者の従事する作業内容の軽減、就業場所の変更等適切な措置をとるべき義務を負う」として、発症当時68歳という被災労働者の年齢も加味して使用者の安全配慮義務違反を認定しているところです。
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