フォークリフトによる労災事故と損害賠償、安全配慮義務

交通事故
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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新潟の労災は弁護士齋藤裕にお任せください まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。 フォークリフトによる労災事故は比較的多く発生しています。 裁判例でも、フォークリフトによる事故について使用者などの責任を認める事例が多くあります。 目次 フォークリフトが走行して歩行者に衝突した事故 フォークリフト同士の衝突についての裁判例 フォークリフトの荷物の積み下ろしによる事故と損害賠償 フォークリフトが可燃物と接触したことによる事故 フォークリフトからの転落による事故 フォークリフトが段差で態勢を崩したことによる安全配慮義務違反

フォークリフトが走行して歩行者等に衝突した事故

フォークリフト運転手に進行方向の安全を確認する義務があるとした裁判例

大阪地裁令和3年12月2日判決は、フォークリフトが走行中に歩行者に衝突した事故について、運転者は、「本件車両を前進させるに当たって,その進行方向の安全を確認するべき注意義務があるにもかかわらずこれを怠り漫然と前進させた過失によって原告を受傷させたものであって,民法709条に基づく不法行為責任を負い,その不法行為は,被告会社の従業員である被告Y1が被告会社の事業の執行について行ったものであるから,被告会社は,民法715条に基づく使用者責任を負う。」とし、会社に賠償責任を認めました。 他方,同判決は、被害者は,「作業中のフォークリフトである本件車両付近において,積荷を支えていたのであって,本件車両の動静を注視して自らの安全の確保を図るべきであるにもかかわらず,これを怠ったことが本件事故の一因となっているものである。」として被害者に15%の過失を認めました。

フォークリフトの被害者に過失相殺を認めた裁判例

名古屋高裁平成28年6月23日判決も、フォークリフトが走行中に歩行者と接触した事故について運転手側の義務違反を認めた結論を維持しつつ、「1審原告についても,A構内は,上記のとおりフォークリフトと歩行者が混在し,それぞれ自己責任で安全を確保すべき状況にあったのであるから,そのような状況下で,1審被告車両が走行している動線上を横切るに当たっては,同車両の挙動を十分注視すべき義務があったといわざるを得ない」として、被災労働者に15%の過失を認め、過失相殺をしています。

フォークリフトの走行経路に誘導員を置くことを安全配慮義務の対象とした裁判例

福岡高裁宮崎支部平成23年11月30日判決は、フォークリフトが作業員に衝突したという事故について、誘導員を置かなかったことを安全配慮義務違反としました。 同判決は、まず、事故現場について、「プラットホームには歩行者専用通路を設けて,フォークリフトと歩行者との接触を可及的に防止する措置がとられていたものの,歩行者専用通路以外の場所で従業員が作業を行うこともあり,フォークリフトと歩行者とが完全に分離された状態にあったものではない。」として人が歩く可能性のある場所であると認定しました。 その上で、同判決は、加害者は、被害者(控訴人)に対し「充電場所に停車中のフォークリフトの充電を行うよう指示した後,運転中のフォークリフトを本件充電場所に向けて時速約10キロメートルで後退させたものであるから,後退中の上記フォークリフトを本件充電場所に向けて歩行中の控訴人に衝突させる危険性があったことは,Aにおいても容易に予見できたはずである。したがって,雇用主である被控訴人は,上記の状況でフォークリフトを本件充電場所に向けて後退させる際には,誘導者を配置するよう業務管理すべき義務を負っていたというべきである」としました。 つまり、被害者がフォークリフト走行経路にいる可能性が極めて高い状況であったため、誘導員をおく安全配慮義務があるとしたものです。 このように具体的にフォークリフトが人にケガをさせる危険性がある場合において、誘導員配置を安全配慮義務の内容としたことは合理的と言えるでしょう。

フォークリフト同士の衝突についての裁判例

フォークリフトによる衝突事故については、フォークリフトが利用される場所の管理者に安全配慮義務違反が認められることもあります。 大阪地裁平成23年3月28日判決は、物流センター内でのフォークリフト同士の衝突事故について、フォークリフト運転手の派遣先のみならず、物流センター側にも安全配慮義務違反を認めました。 派遣先については、 ⅰ フォークリフトによる作業計画を定めていなかったこと ⅱ 作業の指揮者についても,作業に関するリーダーが明確ではなく,アルバイト従業員が実質的に作業を取り仕切っていたこと ⅲ フォークリフトの運転資格を有しない者らに,その運転を要する業務を担当させていたこと から安全配慮義務違反を認めています。 物流センター側については、 ⅰ 一定の範囲で物流センターがフォークリフト運転手に直接に指揮監督をしていたこと ⅱ 物流センターが所有し,提供していたフォークリフト等の機具を用いて行う作業に関しては,物流センターの従業員は,日常的にその様子を目にしており,作業に危険な点があった場合には,いつでも注意をすることができる立場にあったこと を前提に、物流センター側には、派遣先がフォークリフトを適正に作業員らに使用させ,管理しているかどうかを容易に把握することができ,また把握すべき義務があったのに、これを怠ったとして、損害賠償責任を認めました。

フォークリフトの荷物の積み下ろしによる事故と損害賠償

乱雑なフォークリフト操作について過失を認めた裁判例

フォークリフトからコンテナを降ろす際に高いところからいきなりコンテナをトラックにおろしたためにトラックの運転手が負傷した事案についての東京地裁平成22年3月29日判決は、以下のように述べ、フォークリフト運転手の過失と使用者責任を認めました。 「訴外Hが積荷が満載された本件冷凍コンテナを本件トラックの荷台に積載するに当たり,偏荷重のため本件冷凍コンテナがやや傾き,運転席側に隙間があったのであるから,同コンテナを持ち上げたフォークリフトを慎重に操作して安全に本件トラックの荷台に積載すべき注意義務を怠り,やや乱雑なフォークリフト操作をして本件冷凍コンテナの運転席側に落下させて衝撃を生じさせ,これにより本件トラック運転席内の原告にも物理的衝撃を与えて負傷させたことを推認することができるのであり,これと結論同旨の川崎南労働基準監督署長の労働災害認定に誤りはない。訴外Hが本件事故当時被告が使用していた者であり,訴外Hのフォークリフト操作作業は被告の事業の執行につき行っていたことは明らかであるから,被告が訴外Hの原告に対する不法行為につき使用者責任(民法715条1項本文)を負うというべきである。」 このように、荷物の降ろし方が不適切であることを理由とした義務違反を認定しています。

周囲にいる人に注意しなかったことを過失とした裁判例

大阪地裁平成28年9月8日判決は、「フォークリフトを操作して,商品を載せたパレットを持ち上げ,他の場所に運搬する際,周辺で荷物の積卸し及び整理作業を行う作業員の動向に注意して安全に運転する義務があったと認められるところ,同被告は,同義務を怠り,原告が作業していることに気付かず,本件フォークリフトで原告の左側にあったパレットを押して動かし,同パレットを原告に衝突させて本件傷害を負わせたと認められる」として不法行為責任を認めました。 このようにフォークリフトでは、運転だけではなく、荷物の上げ下げの過程についても、周囲にいる者の安全を配慮すべき義務が認められることになります。

フォークリフトが可燃物と接触したことによる事故

フォークリフトについては、排気管と可燃物が接触し、火災が発生することもあります。 東京高裁令和6年2月8日判決は、大量のダンボールがある場所でフォークリフトの前進・後進を繰り返し、よって高温状態となった排気管がダンボールに触れて火事が発生したという事故について、運転者の過失を認めました。参照:フォークリフトによる火災についての裁判例 裁判所は、フォークリフトの取扱書に、可燃物付近で車両を使用等しないことと記載されていたことから、運転手に過失を認めたものです。 使用者において、可燃物近くでフォークリフトを運転しないという指導等をせず、その結果労働者がフォークリフトを可燃物近くで運転し、労働者に傷害などの結果が発生した場合、使用者に安全配慮義務違反があったとして損害賠償責任が認められる可能性があるでしょう。

フォークリフトからの転落による事故

東京地裁平成20年5月2日判決は、フォークリフトをエレベーター代わりに使っていて、転落したという事故について、使用者側がフォークリフトの危険な使用をさせていたとして、使用者側の損害賠償責任を認めました。 しかし、仮に、使用者がフォークリフトに乗らないよう十分な注意を行っていたのに、労働者が注意に反し、転落した場合には、損害賠償責任が認められないか、過失相殺がされる可能性があります。

フォークリフトが段差で態勢を崩したことによる安全配慮義務違反

フォークリフトは1cm程度の段差を通るだけでも態勢を崩し、死亡事故に至ることがあります。参照:厚生労働省の職場のあんぜんサイト このような事故を起こさせないためには、段差を埋める、段差について警告表示をもうける等の対策が必要であり、そのような対策を取らないで事故が発生した場合、使用者は安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

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