食品加工業と労災

交通事故

1 食品加工業と労災

食品加工用機械を用いる食品加工業においては、4日以上の休業を要する労災が年間2000件近く発生しており(平成24年)、しかも身体の切断を伴う事例も多いとされています(厚生労働省作成の資料から)。

三幸製菓における火災事故も食品加工業における労災です。

以下、食品加工業において、労災防止のためにどのような義務が課されているか、みていきます。

2 食品加工用機械における事故防止対策

労働安全衛生規則は、以下のとおり、食品加工用機械における事故防止対策を義務付けています。

第百三十条の二 食品加工用切断機又は食品加工用切削機の刃の切断又は切削に必要な部分以外の部分への覆い、囲い等の設置
第百三十条の三 食品加工用切断機又は食品加工用切削機(原材料の送給が自動的に行われる構造のものを除く。)に原材料を送給する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、当該機械の運転を停止し、又は労働者に用具等を使用させる。
第百三十条の四 食品加工用切断機又は食品加工用切削機(原材料の取出しが自動的に行われる構造のものを除く。)から原材料を取り出す場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、当該機械の運転を停止し、又は労働者に用具等を使用させる。
第百三十条の五 食品加工用粉砕機又は食品加工用混合機の開口部から転落することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、原則として蓋、囲い、高さが九十センチメートル以上の柵等を設ける。
2 開口部から可動部分に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、蓋、囲い等を設ける。
第百三十条の六 食品加工用粉砕機又は食品加工用混合機(原材料の送給が自動的に行われる構造のものを除く。)に原材料を送給する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、当該機械の運転を停止し、又は労働者に用具等を使用させる。
第百三十条の七 食品加工用粉砕機又は食品加工用混合機(内容物の取出しが自動的に行われる構造のものを除く。)から内容物を取り出すときは、当該機械の運転を停止し、又は労働者に用具等を使用させる。
第百三十条の八 食品加工用ロール機の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分には、覆い、囲い等を設ける。
第百三十条の九 食品加工用成形機又は食品加工用圧縮機に労働者が身体の一部を挟まれること等により当該労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、覆い、囲い等を設ける。
このように、食品加工用機械について、主に危険な箇所に多いや囲いを設置するという義務があります。
使用者がこれらの義務に違反し、労働者が死傷した場合、安全配慮義務違反として使用者が賠償責任を負う可能性があります。
実際、旭川地裁令和2年8月31日判決は、「本件製麺機は,常時刃が露出している危険性を有するものであり,また,被告においては,麺に縮れを付けるために,左手で製麺機から出てくる麺を押さえる作業が日常作業として予定されていた。その作業は,露出して上下する刃の真下に手を伸ばすという,高い危険性を有する作業であったというほかない。そうすると,被告は,労働者にそのような危険性を有する作業をさせるに当たって,刃に覆いを付けるなどの物的な対策や,それに代えて労働者を十分に教育するなどして,上記作業から生じる危険性を防止する義務を負っていたというべきである。」として、使用者危険な箇所に覆いをつけたり、労働者に危険性や対策について十分な教育をすべき安全配慮義務を認め、その違反があったとして賠償責任を認めています。
また、大阪高裁令和3年3月12日決定は、精肉作業に従事する非熟練労働者が、点検口から食肉が落ちた為それを押し戻そうと食品加工用切断機の点検口から機械に手を入れ、左環指切断などの後遺障害を伴う傷害を負ったという労災事故について、上記労働安全衛生規則130条の2を指摘しつつ、
本件切断機は、点検口から手が入らないようにする安全ガードや、何らかの不具合が生じた場合に本件回転刃を自動停止させる自動停止装置を備えておらず、また、本件切断機の起動・停止スイッチは、点検口のある側で作業を行う作業員の手元にはな」い等として、使用者の安全配慮義務違反を認めています。

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