連れ去りがあった場合と婚姻費用の算定・請求

離婚問題

婚姻費用額は、監護親・非監護親双方の収入、それぞれが監護する未成年子の人数・年齢によって違ってきます。

例えば、一方の親が監護権者のもとから未成年子を連れ去った場合、未成年子を現に育てているのは非監護権者ということになります。

このような場合でも、実際に非監護権者が未成年子を育てている以上、非監護権者が未成年子を育てているという前提で婚姻費用を算定すべきものか、監護権者が未成年子を育てているという前提で婚姻費用を算定すべきものかどうか問題となります。

この点、東京高裁平成30年4月20日決定は、非監護親が未成年子を現実に育てている場合において、監護親は、監護親が未成年子を監護している前提での婚姻費用請求はできないとしました。

同決定は以下のとおり述べます。

「原審相手方は,審判前の保全処分にも,本案事件の審判にも従わなかったものであり,遅くとも,審判前の保全処分が確定した後の原審相手方による長男と長女の事実上の監護は違法なものであった。」
「しかし,婚姻費用の分担の問題は,子の監護に要する費用の分担の問題を含み,その費用を夫婦間で公平に分担させようというものであるから,実際に発生した費用ないし発生すると統計等により算出される費用を双方に収入その他の考慮要素に応じて負担させることが相当である。」
「そうすると,例えば,子を違法に監護した者から,監護に要した費用を請求された場合には,これを権利濫用ないし信義則違反に当たるとして許されないことはあっても,逆に,子を監護しなかった者から,違法に監護していた者に対し,現に負担しなかった監護費用を請求することは,監護費用には損害賠償の趣旨は含まれていない以上,これを認めるべきではないと考える。」
「したがって,原審申立人が長男及び長女を現実に監護していなかった期間については,原審相手方に長男及び長女の監護に係る費用を請求し得ないものとして,婚姻費用分担額を算定するのが相当である。ただし,その間に原審申立人が支出した長男の幼稚園代については,原審相手方が分担すべきである。」

 

このように、監護権者は、連れ去りがあった場合において、現に未成年子を監護していない以上、監護していることを前提とした婚姻費用の請求はできないとしました。

逆に、非監護権者において連れ去りの結果未成年者を監護している場合でも、監護親による婚姻費用請求が認められない余地を残しており、注目されます。

同決定は連れ去りがあった場合の婚姻費用算定や請求について参考になる裁判例といえます。

 

離婚や婚姻費用でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です