医師の過労死と公務災害・労災についての裁判例

さいとうゆたか弁護士

1 医師の過労死と公務災害・労災

医師は労働時間が長くなりがちですが、それだけではなく、労働時間以外にも負荷が大きくなりがちです。

そのためこれまで少なくない数の過労死が発生し、裁判で過労死・公務災害の該当性が争われてきています。

以下、裁判例をご紹介します。

 

2 オンコールなどの負荷の含め過労死を認めた裁判例

盛岡地裁令和6年6月5日判決は、医師の過労自殺について、公務災害該当性を認めました。

この事案の特徴は、確認できる時間外労働時間が30ー50時間とそれほど長くないことです。

当該訴訟において、遺族側は、家での勤務時間についても労働時間としてカウントすべきと主張していましたが、裁判所は排斥しています。

しかし、裁判所は、

・従来2人だった診療所の業務を1人で担うようになったこと

・外来で、月患者数が1000名を超え、昼休みをとることもできなかったこと

・重症の患者も含め常時10-20人程度の入院患者を診ていたこと

・労働時間として確認はできないものの、ほぼ毎日、自宅にいるときもオンコール待機などをしていたこと。呼び出しは頻繁ではないものの、深夜・早朝に及ぶこともあったこと

・患者虐待疑惑への対応の必要があったこと

・当該医師は、診療所の無床化に反対する意見表明等をしていたが、それに関連して諸方面から批判をされる等していたこと

を踏まえ、強い精神的負荷があったとして、公務災害であることを認めました。

この裁判例の中で注目すべきは、労働時間がそれほど長くなくとも、オンコールや患者診療の負担から業務の過重性が認められることがありうることです。

医師の場合、診療のミスが人命にかかわることから、時間あたりの精神的負荷が大きいと考えられます。

よって、単純に、時間外労働時間の長短だけでは精神的負荷の強弱は判断できないと思われ、盛岡地裁の判断は妥当と考えます。

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