
1 死亡について業務起因性がある場合の取扱い
業務上の疾病により被災労働者が死亡した場合、遺族は遺族補償年金や葬祭料の請求をなしえます。
しかし、そもそも、その死亡の原因が業務上の疾病により生じたのかどうか、他の疾病が原因ではないか争われることもあります。
2 じん肺患者が慢性呼吸器不全急性増悪で死亡した場合の業務起因性
福岡高裁令和2年9月29日判決は、じん肺患者が慢性呼吸器不全急性増悪で死亡した事案について、死亡について業務起因性を肯定しました。
被災労働者はじん肺管理区分3ロの決定を受けていました。
被災労働者が慢性呼吸器不全急性増悪となったことについては、誤嚥性肺炎も寄与していると考えられる事例でした。
裁判所は、誤嚥性肺炎も死因となっていたことについて、
「長期間にわたる本件疾病は、嚥下力を含むAの全身状態を悪化させるものであり、さらに、本件疾病による易感染性をも考慮すれば、被災労働者に誤嚥性肺炎を繰り返し発症させ、重症化させ、難治性のものとしていたのは、本件疾病であったと考えられる。」
「本件疾病と誤嚥性肺炎とは、その発生機序も異なる別の疾病であるが、上記のような被災労働者の長期の療養過程における本件疾病と誤嚥性肺炎との関係に照らせば、被災労働者の直接死因である慢性呼吸器不全急性増悪(Ⅱ型)の相対的に有力な原因が何であるかを検討するに当たって、誤嚥性肺炎と本件疾病を切り離して検討するのは相当ではなく、これを本件疾病とは別の独立した死亡原因として位置付けるべきではない」
との判断を示しました。
つまり、誤嚥性肺炎も被災労働者の死亡に寄与しているものの、誤嚥性肺炎のベースにはじん肺があったため、誤嚥性肺炎とじん肺と合わせて業務起因性の判断を行うべきだとしています。
このように、死亡に影響を与えた疾病が業務上の疾病をベースとして生じている場合、業務上の疾病と死亡に影響をい与えた疾病を合わせて死亡の業務起因性を判断すべきとの判断手法は一般化できるものであり、死亡に複数原因が寄与しているケースにおいて労災認定を得られやすくするものとして評価できます。
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