浪費、使途不明金は財産分与にどのように影響するのか? 新潟県で離婚のお悩みはご相談ください

離婚問題

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 浪費、使途不明金と財産分与

離婚時の財産分与においては、他方配偶者において浪費をしている、その分も財産分与の対象とすべきだとの主張がなされることがあります。
また、使途不明金について、財産分与の対象とすべきだとの主張がなされることもあります。
多くの場合、そのような主張がとおることはありません。
それは、財産分与は、基本的には離婚時にある財産を清算するものであり、浪費されたり、使途不明で消えた財産は存在せず、それを分与することはできないからです。

ただし、東京地裁平成16年6月29日判決は、以下のとおり述べ、使途不明金がある場合において、その分の財産分与を認めています。

まず、同判決は、夫の年収について,総収入から売上原価及び減価償却費を含む経費を控除した額とし、可処分所得はこれから所得税額,地方税額,社会保険料額を控除した額(1124万3427円)というべきとします。

そして、当事者ら家族の生活費について、妻が1か月30万円の家計費で時折不足が出るにしてもやりくりをしてきているなどとして、月額50万円(年600万円)を超えないものと推認されるとしました。

これらを踏まえ、同判決は、可処分所得年額から生活費,住宅ローンを控除すると,夫は毎年350万円の資産を形成してきたと推認されるとしました。
結果として、判決は、4600万円の財産があると認定しています。

同判決は、夫がかなり高収入であること、それにもかかわらず夫はほとんど資産がないと主張しており、夫の主張が極めて不自然だと考えられる事案でした。

同判決は一般化はしにくいように思います。

2 浪費が財産分与において考慮される場合

財産分与における一般的な分与割合

しかし、浪費や使途不明金は、財産分与における寄与分に影響する可能性があります。
通常、夫婦は財産形成に同等の寄与をしたと考えられます。
よって、結婚後形成された財産について、2分の1ずつ分与するのが通常です。
他方、医師や芸能人、経営者など、稼働能力がかなり高い人の場合は、それらの稼働能力が高い人の寄与分が高く修正されることもあります。
つまり、医師である夫・妻が財産の6割、主婦・夫である妻・夫は4割分与を受けるといったような具合です。

浪費、使途不明金があった場合に分与割合を修正することがありうるか?

浪費があった場合は、逆に、浪費をした人について、マイナスの寄与があったとして、その人の取り分を少なくすることが考えられます。

例えば、東京地裁平成17年12月26日判決は、歌舞伎町での遊興にボーナスを使い込んでいた原告について、全財産2億円くらいのうち3000万円程度を分与しました。
これは浪費についてマイナスの寄与分を認めたということでしょう。

なお、被告は、原告の浪費がなければ莫大な財産を形成されたはずであり、原告に財産分与を認めるのは不当だと主張していました。
これに対し裁判所は、被告にも使途不明金があるので、一定額の分与は問題ないとしています。
ここでは使途不明金の存在がマイナスの寄与として考慮されていると考えられます。

東京家庭裁判所家事第6部が令和6年4月26日に公開した「「東京家裁人事部における離婚訴訟のモモデル」について」でも「夫婦の一方が著しい浪費によって明らかに夫婦共有財産を消失させているような場合は、一定の範囲で基準における夫婦共有財産の形成について因果性を認定できる場合もあるため、そうした場合は寄与度を減殺する余地もあろう」として、浪費がマイナスの寄与として考慮される可能性を認めています。

どのような場合に浪費や使途不明金が財産分与に影響するのか?

浪費や使途不明金が財産分与の寄与度に影響するかどうかは、夫婦の収入、夫婦共有財産の総額、浪費等の額等によって判断されると思われます。

浪費や使途不明金が財産分与に影響しないとした裁判例

東京地裁平成17年11月11日判決は、原告が合計200万円もの出費をして海外旅行をしたり,あるいは多額の支出を行ってきたとしつつ、「夫婦共有財産の形成,維持は主として原告と被告の給与収入に拠ってきたといえるところ,その収入額は婚姻期間を通じて1億円を優に超えるものであるから,これに占める原告の海外旅行費用や服飾費支出の割合は,原,被告の財産分与比率の割合の判断に影響を与えるほどのものとは解されない」等として、浪費が財産分与の寄与度に影響することを否定しました。

これは、収入と浪費との割合を重視した判断と言えます。

浪費や使途不明金が財産分与に影響するとした裁判例

他方、東京地裁平成15年9月17日判決は、以下の事情のもとで、被告への財産分与を一切認めませんでした。

ⅰ 当事者らは,原告が経営する会社から給与(被告の給与は月額100万円,原告の給与は月額100万円ないし120万円)を受け取っていたが,これらの給料は,すべて被告が管理し,消費していたこと

ⅱ 被告は,原告との婚姻期間中,株取引によって1億円以上の損害を出したこと

ⅲ 被告は,原告が経営する会社の預金から約5000万円引き出していること

ⅳ 被告は,原告が経営する会社の資金で,競走馬(196万円),絵画(350万円),自家用車(220万円),ゴルフ会員権(500万円)などを購入したこと

ⅴ 被告は,経営するクラブの経費を原告の会社に負担させていたこと

 以上の事実関係を前提に、裁判所は、「被告は,家事や育児を十分にしたとはいえないばかりか,訴外会社から高額な給料をもらい,また,原告から十分な生活費を受け取りながら,むしろこれらを浪費していたというべきであるから,被告が原告との婚姻生活中に,原告の財産の形成又は維持に貢献したとは到底認められない。したがって,被告に対する財産分与を認めるのは相当ではない。」としました。

同判決は、極端に高額な浪費、使途不明金があったため、それを重視し、財産分与を0にしたものと言えます。

以上のとおり、浪費や使途不明金がある場合、その分を財産分与の対象として認めさせることは困難ですが、財産分与の分け方・寄与分において反映させることはありえますので、主張について工夫が必要です。

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