執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 養育費の変更
養育費は一旦取り決めても事情変更があれば変更することができます(もちろん、双方の合意があれば事情変更も不要です)。
ところで、現在、養育費は20歳までと取り決める事例が多いです(私は、原則20歳までとし、大学進学時には、22歳になった後の3月まで養育費を支払うという、条件付の取り決めをお勧めすることが多いですが)。
その場合、大学進学時に養育費の請求ができるのか問題となりえます。
2 大学進学と養育費支払期間の延長
東京高裁平成29年11月9日決定は、もともと成人になるまでの養育費を支払うこととされていた事案について、「前件審判時には、高校生であった本人が大学生になり、現に通学し、成年に達した後も、学納金及び生活費等を要する状態にあるという事情の変更があったということができる。」として養育費の支払期間の変更ができるとしました。
変更後の条件については、大学の学費と生活費に分けて判断しています。
学費については、以下のとおり、支払義務者において私立大学進学に賛成していたとは言えない等として、支払義務を認めませんでした。
「もっとも、大学進学のための費用のうち通常の養育費に含まれている教育費を超えて必要となる費用は、養育費の支払義務者が当然に負担しなければならないものではなく、大学進学了解の有無、支払義務者の地位、学歴、収入等を考慮して負担義務の存否を判断すべきである。」、「本件においては、相手方は本人が私立高校に通学することに反対し、本人の私立大学進学も了解していなかったと認められること、通常の養育費に含まれる教育費を超えて必要となる費用は本人が大学進学後は奨学金等による援助を受けたり、アルバイトによる収入で補填したりすることが可能と考えられること、抗告人の収入はわずかであり相手方には扶養すべき子が多数いるという中で私立大学に進学した本人に対して奨学金やアルバイト収入で教育費の不足分を補うように求めることは不当ではないこと、前件審判時以降抗告人と相手方の収入はほとんど変化がないこと、前件審判においては、通常の養育費として公立高校の学校教育費を考慮した標準算定方式による試算結果を一か月当たり五〇〇〇円超えた額の支払が命じられていることからすると、相手方に対し、通常の養育費に加えて、本人が通学する私立大学への学納金について、支払義務を負わせるのは相当でない。」としています。
他方、大学進学に反対していたとまでは言えないとして、以下のとおり、22歳になった直後の3月までの生活費に関わる養育費の支払いを命じました。
「これに対し、前件審判において成人に達する日の属する月までとされた養育費の支払期間を大学卒業時である満二二歳に達した後の最初の三月までに変更すべきかどうかは別異に考慮すべきである。」
「すなわち、相手方は、親として、未成熟子に対して、自己と同一の水準の生活を確保する義務を負っているといえること、本人は成人後も大学生であって、現に大学卒業時までは自ら生活をするだけの収入を得ることはできず、なお未成年者と同視できる未成熟子であること、相手方は本人の私立大学進学を了解していなかったと認められるが、およそ大学進学に反対していたとは認められないこと、相手方は大学卒の学歴や高校教師としての地位を有し、年収九〇〇万円以上あること、相手方には本人の他に養育すべき子が三人いるとしても、そのうちの二人は未だ一四歳未満であることに照らすと、相手方には、本人が大学に通学するのに通常必要とする期間、通常の養育費を負担する義務があると認めるべきである。そして、相手方は抗告人に対し、本人が大学に進学した後も成人に達する日の属する月まで毎月五万五〇〇〇円ずつの支払義務を負っていたから、毎月同額を本人が満二二歳に達した後の最初の三月までの支払を命じるのが相当である。」
このように養育費支払いが20歳までとされていても延長できる可能性はあります。
しかし、養育費支払義務者の大学進学についての意思などにも左右される部分があります。
ですから、基本的には取り決め時において大学進学後の養育費まで取り決めておくべきということになります。
3 扶養料請求と養育費支払の終期
ところで、養育費では20歳になった以降の請求ができない場合でも、子どもが非監護親に対して請求する扶養料として請求する場合には、20歳になった以降も請求できる場合があると言われることもあります。
この点、東京高裁平成22年7月30日決定は、扶養料請求について、
「一般に,成年に達した子は,その心身の状況に格別の問題がない限り,自助を旨として自活すべきものであり,また,成年に達した子に対する親の扶養義務は,生活扶助義務にとどまるものであって,生活扶助義務としてはもとより生活保持義務としても,親が成年に達した子が受ける大学教育のための費用を負担すべきであるとは直ちにはいいがたい。」として、成年になった後において親が扶養料を払う義務が原則としてあるとは言えないとしました。
他方、「もっとも,現在,男女を問わず,4年制大学への進学率が相当に高まっており・・・子が4年制大学に進学した上,勉学を優先し,その反面として学費や生活費が不足することを余儀なくされる場合に,学費や生活費の不足をどのように解消・軽減すベきかに関して,親子間で扶養義務の分担の割合,すなわち,扶養の程度又は方法を協議するに当たっては,上記のような不足が生じた経緯,不足する額,奨学金の種類,額及び受領方法,子のアルバイトによる収入の有無及び金額,子が大学教育を受けるについての子自身の意向及び親の意向,親の資力,さらに,本件のように親が離婚していた場合には親自身の再婚の有無,その家族の状況その他諸般の事情を考慮すべきであるが,なお協議が調わないとき又は上記親子間で協議することができないときには,子の需要,親の資力その他一切の事情を考慮して,家庭裁判所がこれを定めることとなる(民法878条,879条,家事審判法9条1項乙類8号)。」として、諸般の事情を考慮し、20歳以降についても学費、生活費などの扶養料の請求ができるとしています。
必ずしも養育費より扶養料請求の方がハードルが低いとは言えないと思われます。
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