執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 親権と現状尊重
親権者を決定するについては、乳児については母親優先、従来の主な監護者優位、兄弟不分離、10歳以上は子どもの意思尊重等が言われます。
これらの要因を考慮してもあまり差がない場合、あるいは夫婦の別居後一方の親と子どもとの同居が長引いた場合等において、一方の親が子どもを監護しているという現状の尊重が親権決定において重要な要素となってきました。
以下、現状尊重により親権判断をした裁判例を見ていきます。
2 連れ去り勝ちを認めた福岡高裁令和1年10月29日決定
福岡高裁令和1年10月29日決定は、別居後父が1年半程度監護をしてきた、子は平成22年と24年生まれ、という事例において、
・同居中の子らの監護についての時間的ないし量的な実績は,父と母で明らかな差があるとはいえない
・子らの乳児期に主として監護をしていたのが母であることや,子らの発言の中に,母への強い思慕を示す言葉が見られることからすると,子らは,母に対してより強い親和性を有して
いる。
・子らは父とも良く親和している
・子らは別居後、父のもとでの生活になじんでいる
・父は別居後適切に監護しており、子に問題も認められない
・母との宿泊付面会交流も実施されている
ことを前提に、「従前からの安定した監護環境ないし生活環境を維持することによる利益を十分考慮する必要があり,乳幼児期の主たる監護者であった相手方との親和性を直ちに優先すべきとまではいえな」として、母からの監護者指定の請求を認めませんでした。
この事案では、
・父母が同居中の監護について、優劣つけがたい状況にあった
・上の子は10歳程度と思われるところ、子の意思として明らかに母との同居を希望しているわけではないものの、どちらかというと母親と親和性があった
という事情がありました。
ですから別居後、父親が監護していたという状況がなければ、母親が監護者として指定された可能性は大きいと言えるでしょう。
1年半の監護実績があったからこそ、父が監護者と指定されたと言えます。
より長期の監護実績があるケースであれば、同居時の監護実績の差が吹き飛ぶこともあるでしょう。
なお、監護者指定審判等は平成30年中に申し立てられています。ですから、父親が監護実績を積み重ねたのは、その多くが係争中です。つまり、係争中の監護実績でも監護者指定において考慮されうるということです。この点は注意が必要です。他方、係争中の監護実績を考慮しないという裁判例も存在するところです。
民法改正により、協力義務・人格尊重義務が規定されたことから、「連れ去り勝ち」、現状尊重は大きく改善することが想定されるところです。
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