執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
1 遺族退職金と別居中の妻・夫
中小企業退職金共済法所定の退職金共済契約に基づく退職金、その他多くの会社の所定の退職金においては、配偶者が最先順位の受給権者とされています。
ここで配偶者について、別居中で、婚姻関係が破綻しているような場合も含むのか、問題となります。
2 退職金共済契約についての判例
最高裁令和3年3月25日判決は、中小企業退職金共済法所定の退職金共済契約に基づく退職金等について、「民法上の配偶者は、その婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には、中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者にあたらないものというべきである」として、別居中の夫には請求権がないとの判断を示しました。参照:退職金共済についての判例
同判決の前提となる事実関係は、
ⅰ 夫は平成4年頃、妻と別居し、他の女性の下で生活を始め、以降、妻と同居したことはなかった。別居後、夫婦が面会することは数回しかなかった、
ⅱ 平成21年ころ、夫は妻に協議離婚を求める書面の交付を受けたが、妻は子どもの就職を懸念して離婚の手続きをしないでいた、
ⅲ 平成26年に子どもは大学を卒業したが、そのころには妻の病気が悪化して、離婚届を作成することができなくなり、同年死亡した、
ⅳ 夫は妻の葬儀に出席しなかった、
というものでした。
別居期間が20年以上にわたっているものであり、事実上の離婚状態にあるという評価はありうるところでしょう。
しかし、この事案では、夫は有責配偶者であり、それが考慮された可能性は否定できないと考えます。
逆に同じ別居期間でも妻からの同種請求がなされた場合でも請求が認められないかどうかは議論の余地があるかと思います。
なお、同判決は、出版厚生年金基金の規約に基づく遺族一時金についても同様の判断をしており、別居中の配偶者が各会社が定める遺族退職金の請求権者となりうるかどうかについても影響する判断かと存じます。
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