執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 フレンドリーペアレントルール
フレンドリーペアレントルールは、カリフォルニア州などで導入されているもので、非別居親との面会交流への協力性等を親権者決定の上で重視する考え方です。
日本ではフレンドリーペアレントルールという言葉でこれを認めた裁判例はないようですが、千葉家裁松戸支部平成28年3月29日判決は、5年10ケ月子を監護してきた母親ではなく、充実した面会交流計画(年間100日)を提示した父親を親権者として決定しており、フレンドリーペアレントルールを実質的に採用した裁判例とも評価されます。
しかし、残念ながら、同判決は、東京高裁平成29年1月26日判決で変更されてしまいました(母親が親権者)。
同判決は、「父母が裁判上の離婚をするときは,裁判所は,父母の一方を親権者と定めることとされている(民法819条2項)。この場合には,未成年者の親権者を定めるという事柄の性質と民法766条1項,771条及び819条6項の趣旨に鑑み,当該事案の具体的な事実関係に即して,これまでの子の監護養育状況,子の現状や父母との関係,父母それぞれの監護能力や監護環境,監護に対する意欲,子の意思(家事事件手続法65条,人事訴訟法32条4項参照)その他の子の健全な成育に関する事情を総合的に考慮して,子の利益の観点から父母の一方を親権者に定めるべきものであると解するのが相当である。父母それぞれにつき,離婚後親権者となった場合に,どの程度の頻度でどのような態様により相手方に子との面会交流を認める意向を有しているかは,親権者を定めるに当たり総合的に考慮すべき事情の一つであるが,父母の離婚後の非監護親との面会交流だけで子の健全な成育や子の利益が確保されるわけではないから,父母の面会交流についての意向だけで親権者を定めることは相当でなく,また,父母の面会交流についての意向が他の諸事情より重要性が高いともいえない。」として、面会交流の充実は親権を決める上での一事情でしかないとします。
その上で、
・母親がその時点に至るまで主たる監護者であったこと
・子が母親と暮らしたいという意向を示していること
・父母宅が片道2時間半の距離にあるということ
を踏まえ、母親を親権者としました。
同事例では、
・父母宅の距離が遠く、年100日の面会交流計画が子に負担を与える可能性があったこと
・面会交流計画以外については、母親優位な事情があったこと
が逆転判決の大きな要因と思われます。
高裁も、面会交流の計画が親権を決める上で考慮される事情であることは否定をしていませんので、
・一方の面会交流計画が他方より充実していて、かつ、子どもに大きな負担も与えない
・面会交流計画以外の要素において父母間の優劣に大きな差がない
というケースでは、面会交流計画の内容が決め手となって親権者が決まるということもありうるでしょう。
裁判所の判断の上で、親権判断の際に面会交流計画の重みを増すようにさせることが実務上重要な課題です。
改正民法では、父母による共同養育の理念、協力義務・人格尊重義務が規定されました。
改正民法下でフレンドリーペアレントルールを普及させていくことが可能だと考えます。
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