
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 内縁とは?
どのような場合に内縁と認められるか?
内縁とは、当事者間に婚姻意思はあるものの、婚姻届出をしていない関係のことを言います。
多くの場合には同居し、共同生活を送る関係です。
同居は内縁成立にとって重要な要素ですが、同居だけでは内縁成立には足りません。
夫婦としての実態があること、夫婦であることを外部にも表明することが内縁成立のための重要な要素となります。
東京地裁令和3年10月6日判決は、連名の宛名の年賀状があることと同居事実だけでは内縁関係の成立は認められないとしていますが、病院に出す書類や賃貸借契約書に配偶者としての記載をするようになった以降について内縁関係を認めました。
東京地裁令和1年10月28日判決は、
ⅰ 当事者らの同居期間が約15年3か月に及んだこと
ⅱ 当事者らが同じ姓を使用していたこと
ⅲ 他方のために家事を行ったり、毎月生活費を渡される関係があったこと
ⅳ 他方のために通帳も預かっていたこと
ⅴ 他方親族との交流もあったこと
ⅵ 他方の先祖のための墓のための費用も負担していたこと
ⅶ 墓石に2人の名前を刻んでいたこと
などの事情から内縁関係を認めました。
東京地裁令和4年10月14日判決は、同居がないこと等から内縁関係を否定しています。
同居がなくても内縁関係が認められる場合
ただし、同居がない場合でも、相互の協力し合う実態がある場合には内縁関係が成立する可能性があります(高松高裁平成11年3月12日決定等)。
この点、東京地裁令和5年11月28日判決は、
・当事者らが別居していたこと
・子どもの学校への提出物に関するやり取り以外に、特段のやり取りもしていないこと
・一方が、他の異性とラブホテルで宿泊するようになっていたこと
などを踏まえ、内縁関係が終了したとしました。
内縁関係の終了
共同生活が内縁の基盤ですので、多くの場合、共同生活終了と同時に内縁関係が終了することになります。
上記東京地裁令和5年11月28日判決、東京地裁令和1年10月28日判決は、同居の終了とともに内縁関係が終了したものとしています。
2 内縁と財産分与
内縁についても、その解消(死亡以外)の際には財産分与が認められるというのが一般的な扱いです。
重婚状態の場合でも、法律婚が破綻状態となっている場合、財産分与が認められてきています。
死亡による内縁終了の場合については、最高裁平成12年3月10日決定が、財産分与をすることはできないとの判断を示しています。参照:内縁と財産分与についての判例
ただし、最高裁決定のケースは内縁の夫婦間に継続的同居がないケースでした。
継続的同居があるケースについて財産分与を認めるという判断が今後なされる可能性は否定できません。
なお、内縁の場合も、法律婚の場合と同様、内縁関係解消後2年以内(改正民法施行後は5年以内)に財産分与の請求をする必要があり、交渉で解決できない場合には家裁への調停申立を行うことになります。
3 内縁と慰謝料
正当な理由なく内縁関係を解消させた配偶者は慰藉料支払義務を負います。
東京地裁令和3年10月6日判決は、不貞、暴行等もあった内縁破棄の事案で、不貞慰謝料50万、通院慰謝料55万、不当破棄の慰謝料50万円を認めました。
重婚的内縁の場合についても、法律婚が破綻した後、内縁関係を破棄した配偶者の違法性が他方配偶者の違法性より大きいような場合(若年の人に対し、法律婚については離婚をすると甘言を用い、内縁状態に入らせたような場合等)、慰藉料が認められる可能性があります。
内縁関係のある人と不貞関係を持った不貞相手についても、慰謝料支払義務を負う可能性があります。
4 内縁と年金分割
内縁の場合でも年金分割の対象となりえます(厚生年金法3条2項は、「この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。」として、内縁の配偶者も含めて「配偶者」に含まれるとしています)。
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