高額所得者の婚姻費用の算定

離婚問題

近年、婚姻費用の算定は、裁判所の婚姻費用算定表をベースに、それを事情に応じて修正して算定されるのが大多数です。

しかし、婚姻費用算定表に記載がないほどの高額所得者については特別な配慮が必要だとされます。

例えば、東京高裁平成29年12月15日決定は、義務者の年収が1億5000万円を超える場合について、以下のとおり婚姻費用を算定しています。

 「一般に,婚姻費用分担金の額は,いわゆる標準算定方式を基本として定めるのが相当であるが,本件では,義務者である抗告人が年収1億5000万円を超える高額所得者であるため,年収2000万円を上限とする標準算定方式を利用できない。高額所得者については,標準算定方式が予定する基礎収入割合(給与所得者で34ないし42パーセント)に拘束されることなく,当事者双方の従前の生活実態もふまえ,公租公課は実額を用いたり,家計調査年報等の統計資料を用いて貯蓄率を考慮したり,特別経費等についても事案に応じてその控除を柔軟に認めるなどして基礎収入を求める標準算定方式を応用する手法も考えられる。しかし,抗告人の年収は標準算定方式の上限をはるかに上回っており,職業費,特別経費及び貯蓄率に関する標準的な割合を的確に算定できる統計資料が見当たらず,一件記録によっても,これらの実額も不明である。したがって,標準算定方式を応用する手法によって,婚姻費用分担金の額を適切に算定することは困難といわざるを得ない。」
そこで,本件においては,抗告人と相手方との同居時の生活水準,生活費支出状況等及び別居開始から平成27年1月(抗告人が相手方のクレジットカード利用代金の支払に限度を設けていなかったため,相手方の生活費の支出が抑制されなかったと考えられる期間)までの相手方の生活水準,生活費支出状況等を中心とする本件に現れた諸般の事情を踏まえ,家計が二つになることにより抗告人及び相手方双方の生活費の支出に重複的な支出が生ずること,婚姻費用分担金は飽くまでも生活費であって,従前の贅沢な生活をそのまま保障しようとするものではないこと等を考慮して,婚姻費用分担の額を算定することとする。」

「相手方が従前の生活水準を維持するために必要な費用は月額105万円程度(公租公課を除く。)とみるのが相当である。」

同決定は以上を踏まえ、義務者が別途賃料負担を強いられること、権利者が働くことが可能であることなどを考慮し、婚姻費用額の修正を施し、婚姻費用額を月額75万円としました。

高額所得者の婚姻費用算定方法は、以上のような具体的な生活状況を踏まえた生活費を主な考慮要素として算定する方法以外にも様々ありますが、東京高裁決定は算定の1方法を示すものとして参考になるものと思われます。

離婚、婚姻費用でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

弁護士 齋藤裕(新潟県弁護士会所属)

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